第二章


〜1〜

「うう……」
 異様な勃起感で、僕は目を覚ました。
 ビリビリと股間がむず痒く、脳に途方もない高揚感が漂っている。
 ……やっぱり夢じゃないわけか。
 僕は天女に抱きつかれたまま、ベッドの中で硬直していた。
 カーテンの隙間から日が射している。もう朝。もちろん、それくらいの光だ
けでは何時かがわからない。
 僕は左手で頭の上にある目覚まし時計をまさぐる。ちなみに、右半身はクレ
ナの右手と右脚に絡め取られていて、おまけに胸の膨らみも押しつけられてい
る。ついでにいえば、バストトップのしこりを感じた。
 動けば起こしてしまうだろうから、動作には気を遣う。その必要があるのか
は、わからないんだけど。
 ここはいちおう、僕の住みかだし、クレナは彼女じゃない。
 ああ……彼女じゃないから気を遣うのか。
 薄暗いのでライト機能を使って、デジタルの数字を確認する。
「……七時半」
 たっぷり気味の睡眠だ。
 自然に起きたせいか、頭はばっちり覚めている。心なしか、体もすっきりし
ていた。勃起が痛いことを除けば、だけど。
 ぎぎぎっと首を動かして隣を見た。キスしてしまいそうになるくらい近くに、
天女の寝顔があった。微かに揺れる長い睫毛、ほんの少しだけ開いた唇……あ
らためて見ると、ドキッとするほど綺麗で、可愛い。
 ふう……。
 あまり見ているのも失礼かなーと、視線を天井へ戻す。
 ずっと上の方に、クレナの住んでる国があるのかな……?
 それとも天界というのは比喩だろうか。
 ま、深く考えてもしょうがないか。
「……起きてくれないと、トイレいけないよな」
「あ、そう。ごめん、行ってきていいよ」
 不意に、クレナが上半身を起こした。
「起きてたんだ」
「そーよ。別にあたし、疲れてないし」
 昨日のエッチの消耗度は、僕の方がはるかに大きい。
 なんせ九回だもんな……。
 僕は首を動かしながらベッドから降りる。
「よく襲わなかったね」
「え?」
 振り返ると、すでにベッドを降りていたせいで、薄暗い部屋には眩しすぎる
白いももが目に飛び込んできた。クレナが歩くと、鳶色のロングヘアーがさら
りと揺れる。
「一晩中、勃ってたはずだよ?」
 どおりで、離れても勃起がおさまらないと……。
「まあ、かなりムラってきたけど……」
 襲ったらどうなる?
 しばし真剣に考えてみる。
 すぐに理性が飛んで……あまりいい想像が浮かばない。
「けど、なんなの?」
「そんな勇気ないなーって」



〜2〜

「大学までついてこなくてもいいんじゃ……」
 僕は並んで歩いているクレナに言った。
「べっつにいいでしょー。君が勉強してるとことか興味あるし。それとも、あ
たしがいると迷惑?」
「人から見られるのはあんまり慣れてなかったりするんだ。それにさ……」
「だいじょうぶ。講義が始まったら解放してあげるから」
 そう、僕はクレナに腕を抱えられていて勃起中である。歩きにくいし、周囲
が気になって仕方がない。ただでさえ、クレナを連れていて注目されていると
いうのに……。
 よかった。あんまり勃起が目立たないズボンはいてきて。
「それはそーと、二コマ目、講義ないんだよね?」
「そうだけど……?」
 勃っているせいでどうも思考力が落ちているけど、冷静に考えてみれば、今
朝その情報を話したからついてきたのかもしれない。
「お昼休み入れたら、なんと二時間半も時間があるんだよねー?」
「たしかに、あるなぁ……」
 すでに何が言いたいかはおおよそ見当がついている。
「こっちの大学なら、構内でエッチしても怒られないでしょ?」
「……うーん」
 しただけならともかく、見つかったら怒られると思うけどなー……。
「向こうはさ、けっこう、うるさいんだよね」
「うるさいって、見つかったことあるわけ?」
「友達が。一週間停学くらっちゃった」
 僕にはその処分が重いのか軽いのかよくわからない。
 まあ、大学の講師のことを聖職とはあんまり呼ばないから、大丈夫かもしれ
ないけど。
「いーじゃん、君、学校終わったらバイトでしょ? だったら、そのときにし
ておかなきゃ」
「そりゃーさ、アパートじゃできないと思うけど……壁薄いし」
「うんうん。けっこうゾクゾクする声出してたよね、君」
「それって、大学でも同じだよ」
「密室がないかぁ……。女子トイレでいーんじゃないの?」
「女子トイレで男の声がしたら、やっぱまずいって」
「そっかぁ。じゃあ男子トイレの個室でいかが?」
 基本的に講義中の時間だし、来客は少ないはずだ。他に考えつく場所といっ
たら野外。山よりの場所へ行けばブラインドも多い。普通の女のコとのエッチ
なら、それでだいじょうぶだと思うけど……クレナの場合はやっぱり密室がい
る気がする。僕のために。サークルの部室なんかも候補だけど、だれか来た場
合のことを考えるとトイレより使う気になれない。ベストは間違いなくホテル
だけど、クレナの希望は大学内のようだ。
「ぎりぎり……妥協、かな」
 一コマ目の講義が終わる。
「よし、オッケー」
 なぜか僕の隣で講義を聴いていたクレナが立ち上がる。僕らは人気の少ない
校舎のトイレへと向かった。
「……あんましきれいじゃないね」
 クレナが男子の個室を順々に見て、唇を尖らせた。ここには三つあったけど、
二つは和式でちょっとしんどい。残りの一つの洋式も、使えるほどきれいとは
言えない。古めの校舎ということが災いした。
「女子トイレにしよ」
「ここと変わらないんじゃないかな。むしろ汚いかも」
「他の校舎行く?」
「建て替えられたばっかりの新しい校舎だったら、きれいだと思うけど……人
が多いだろうし……」
「いいよいいよ、そこにしよう」
 気楽に言うクレナに、僕は少し呆れた。
「旅の恥はかきすてだけど……この大学は、いまは僕の一番重要な日常生活の
空間なんだよ。無茶はしたくない……っていうか、できない」
「あ、ごめん」
 二秒くらい気を遣った顔をしてから、クレナは悪戯っぽく笑う。
「でも、君さ、あたしが天女だって忘れてない?」
「へ?」
「このトイレの外に声が漏れないようにするくらい、朝飯前なのよねー」
 昨日は髪の毛の水分を飛ばしていたし、事実なのだろう。
「ホントはさ、こういうのってよくないんだけどね。淫らに使ったり見せたり
話したりしてはいけない、って規約があるから」
「ここでしてたら、僕に黙ってそうした、ってこと?」
「そよ。まー、あたしもそれなりに考えてる、ってことね」
「そっか……」
「べつに気にしないでいいって。話さなかったあたしが悪いんだもの」
「それじゃ、行こう。新しい校舎。女子トイレでいいよ」
「オッケー」



〜3〜

 僕らはなんとか人目を避けて、女子トイレの個室の一つに入り込んだ。それ
だけでドキドキもの。
 中は新しいだけあって壁も清潔感があるし、匂いも芳香剤のおかげで気にな
らなかった。これが十年後には、さっきのトイレと同じようになると思うと複
雑だけど。
「じゃ、はじめよっか」
「声が聞こえないっていっても、やっぱり、けっこう怖いなー……」
 フタの上に座っている僕がつぶやく。と、誰かの足音が聞こえた。僕はハッ
と口を閉じて押し黙る。
「はい、下だけでいいから脱いで」
 クレナは平気で行動する。ためらっている僕をよそに、ベルトを解き、ズボ
ンを引き下げる。そのまま足からも引き抜くと、荷物かけのフックにズボンを
ぶら下げた。
「んー……いっぺん立って」
 何ごとか考えるクレナに言われ、僕は下半身を丸出しにしたまま立ち上がっ
た。クレナはフックにかかっているズボンから、ベルトを引っぱり抜いた。
「後ろ向いて、縛ってあげるから」
「い、いや、べつにそんなことしなくても……」
「そっちの方が気持ちいいってぜったい」
「くふっ!」
 そろりと勃起したペニスを撫でられた。やっぱり性器を触られると、他の場
所に触れているときとは比べ物にならないくらいの快感が走る。
「わ、わかったってば……」
 僕はクレナの手を振りほどくようにして、背中を向けた。
「ううっ……」
 天女はベルトで僕の両手を緊縛していく。ぐるぐると束ねた腕に二周ほど巻
き付け、ギュッと引っぱり、固定する。
 手は縦に重ねられているから、本気で抜こうとすれば、ほどけないこともな
さそうだけど、基本的にはまともに動かせない状態になっていた。
「こっち向いていいよ」
 弾んだ天女の声。
「まず一発抜いてあげる。昨日からほとんど勃ちっぱなしだもんね」
「くう……」
 クレナはしゃがむと、ペニスの角度を地面と平行にし、大きく唇を開いた。
「あ……あ……、かはぁっ!」
 たっぷりと唾液がためられた口内に、亀頭が丸ごと銜え込まれた。とろける
ような甘い蜜が、口内に包み込まれた敏感の性肉にしみ込んできて、それだけ
で我慢の限度だと、震えるペニスが主張する。
 快楽に溶かされた脳内の温度が急上昇した。
「ほれくらい保ふかな……?」
 天女が男の逸物を銜えながら、上目遣いで笑う。ぞくくっと縛られている腕
に鳥肌が立った。
「んんっ、はむ……むぅ、んっんっ……」
 裏筋を舐められたかと思うと、亀頭に沿って舌が左右に反復する。濡れた唇
で出っぱったエラを引っぱられる凶悪な刺激。僕は黙っていることができず、
切れ切れの悲鳴を歯の間から漏らす。
「うぁっ、くっ、クレ……ナ……くううー……」
 クレナの言うように、手を拘束されているせいで、快感が大きくなっている
ように思えた。声を出すことと、身を捩らせることくらいしか許されていない
という限定条件が、脳髄にそう感じさせているのだろうか。
「じゅぷっ、じゅぷぱっ、じゅぱ……!」
 いやらしく聞こえる音、相手を責め嬲るような嗜虐的な視線、精を吸い出す
ような絶妙な舌使い……昨日はほとんど理解できなかったけど、クレナのテク
ニックは相当なものだった。それに加え、官能に直接訴えるという天女の特性。
粘膜同士の触れ合いはさらにその性質を強調し、僕はほんの二十秒で追い込ま
れてしまう。
「イッちゃう? いいよ、イッちゃって……んぐっ、んんんーっ」
「はっ、はうううううっ!」
 クレナはいったん吐き出した肉棒を、一気に呑み込んでいく。肉杭のほとん
どが消えるほどのディープスロート。
「うはああぁっ!」
 美人の口の中へ挿入しているという禁忌的な感情が、口粘膜に包まれながら
奥へと勢いよく滑っていく快感を倍増させた。こもったクレナの呻き声をスパ
イスに、僕はさらに腰を押し進め、顎を仰け反らせる。
「くあああああっ! あああっ!」
 ペニスの先端が行き止まりにぶつかった瞬間、僕はクレナの喉へ向けて精液
を迸らせた。
 腰の中から精気が根こそぎ抜き取られていくような、太い射精感。僕は昨日
から溜めさせられていた大量の精液を、天女の口へドパドパ流し込んでいく。
「むぐぐぅっ! んぐぐっ、ぐうううぅーーっ!」
 クレナは窒息しそうな声を出しつつも、顔を引かない。むしろ積極的に僕の
腰を両手で引きつけ、細い首を何度も脈動させて、とめどなく注ぎ込まれる熱
い男の粘液を飲み下していく。僕はクレナの喉奥を射精中の亀頭で隅々まで蹂
躙し、放精が止まったのを確認してから、腰を引いた。
 一発くらいでは萎えられない肉棒が、いまだ吸飲が続けられている天女の口
の中からズルズルと現れ、じゅぽんっと抜けて跳ねる。
「はー、はー……はぁ……」
 トイレ内に響くのは、僕の荒い息だけ。クレナは、口から溢れて唇を化粧し
ている白濁汁を舌と指で味わっている。
「ふぅ……んふふ、昨日よりは保ったね?」
「そ、そうかな……?」
「昨日のままなら、二連続でイッてたと思うよ?」
「は、はは……なら、よかった……かな?」
 笑いながらも、一発目で僕は息も絶え絶え。少しは天女の快感に慣れたのか
もしれないけど、ことあるごとに強制勃起させされ、焦らされ続けてきたせい
で、すでに肉体には重い疲労があった。
 しかし、脳の興奮指数はほとんど下がらず、相変わらず快感の中に浸かって
いる。ペニスは維持しているどころか、天女の膣の感触を思い起こしているら
しく、硬度と体積が増していた。
「ここも期待してるみたいだし……」
「くぁ……」
 指先で、唾液に濡れる勃起を弾かれた。
「オマ×コの中で徹底的にイカせてあげるね」
 クレナはワンピースの裾を上げ、下着を足から抜いた。ズボンを吊したフッ
クに引っかけ……。
「そーだ……」
 ふと思いついたように、僕のズボンのポケットから出したハンカチを、僕が
座るはずの上蓋に敷いた。
「これで和姦だよね?」
 にまっ、とクレナが微笑んだとき、用を足した隣の客が出ていった。



〜4〜

「後ろ手に拘束されてるし……あんまり和姦っぽくないけど」
 僕は洋式便器の上蓋に座らされる。クレナは僕の肩に手を置き、便器ごと腰
をまたいだ。顔が胸の谷間に埋まってしまう。
「ふふ、君、忘れてないよね?」
「な、なにを……?」
 胸の感触のみを顔で味わいながら、聞き返す。
「昨日は一回しか抜き差ししてない、ってこと」
「う……」
 その後で気絶してしまった。情けないというか、なんというか……下手をす
れば腹上死。
「今日は服着たままっていうのが、いちおう、サービス」
 といっても、服の上からでも胸の膨らみの感触はすごいものがあるし、大学
でこんなことをしているという背徳感のせいで興奮も高まっている。腕を縛ら
れているために大きな被虐感をも感じているし、肌に触れる面積が少なくても
サービスされているとはちっとも思えなかった。
「一回しか射精させてないのもね。あと八回はあたしの膣内にぶちまけられる
でしょ? ああ、でも、精液はあと三回くらいしか出ないかもしれないけど」
 肉棒に手を添え、角度を整えるクレナの悪魔のような微笑み。天女は単に天
界に住む女の略であって、性格を表しているわけではないことを、僕は完全に
理解した。
「ふふっ、イクよ?」
 けれどその魔性の微笑みは抗いがたい魅力を持っていて、僕の官能を虜にし
てしまっている。あるいは官能だけでなく、すでに僕の心をも……。
「はくっ!」
 クレナのワンピに隠れたペニスの先端が、ニュプッと見えない秘唇にキスを
した。そのまま入り口付近をクニクニとこね回すことを強制される。
「はあッ! ううっ、うああっ……」
 僕はクレナの胸の中から呻いた。緊縛されてほとんど動かない腕に力を込め、
漏らしてしまわないように懸命に堪える。
「もうちょっと焦らしてあげよっか?」
「そんな、クレナっ……」
「はやくイキたいの? そんなことないよね。一回をできるだけ長く楽しみた
いでしょ?」
「うくぅっ、はっ、アアァーッ……!」
 いい具合に尖った先端が、すでに溢れ出している愛液でヌメった小陰唇を掻
き分け、肉裂の上を前後に行き来する。柔らかい肉ビラが亀頭の頭頂部付近に
ヌチャヌチャまとわりつき、鈴口は変形させられながらクレナの女性器の形を
乱暴に覚え込まされていく。
「遅漏でよかったね? こんなに感じられる人、めったにいないと思うよ?」
 クレナは耳のそばで囁きながら、挿入せずに僕を嬲り続ける。昨日の僕なら
とっくにイッていただろうから、やはり特訓で我慢できる快感の数値は増して
いたようだ。とはいっても余裕などこれっぽっちもなく、臨界を突破してしま
わないようにするのが精一杯という有様だった。
「うふふっ、良、いい顔してる。すっごく蕩けてて……気持ちよさそうで」
「ハァ、ハァ、ハァ……」
 クレナの腰の動きが止まったので浅く何度も息を吐き、溜まった快感を排出
する。
「じゃ、オマ×コに入れるよ? 我慢できるかな?」
「くふっ……」
 おののきながらも期待に打ち震える肉茎に、濡れそぼった秘肉が覆い被さっ
てきた。
「あうううっ、はあっ、く、クレナ、クレナ……!」
 亀頭が肉壺に呑み込まれ、昨日射精してしまった位置をなんとか通り抜ける。
「ン……いい調子、そのまま……」
「ぐううっ……うううぅ……」
「もうちょっと……あとは一気に入れてあげる」
「ちょ、そんなことされたらっ……」
「ほら、良、イクよ……ンンッ」
 ずぶぶぶっ!
「はあああああぁーーーっ!」
 腰を最後まで落とし込まれ、ペニスはうねる肉襞の間を勢いよく突き進むこ
とを強要された。景色が白いもやに呑まれ、欲望が睾丸で急速に膨張する。
 どぴゅぴゅっ、どぷっ、どぱっ!
 僕は膨らんだ欲望を抑え込むことができずに、膣内で思い切り破裂させてし
まった。
「あらら、出ちゃったね……はあぁ、オマ×コの中、熱い……」
 僕の分身は天女の肉に包まれながら歓喜に打ち震え、クレナの子宮へと精液
を浴びせかける。熱い飛沫が肉壁にぶつかるたび、クレナの膣が下から上にと
ペニスを絞るように収縮し、精液をむりやりに吸い出していく。
「あが……ううぁ……」
 自分から支えを求めることができない僕はガクガクと全身を震わせた。クレ
ナはそんな僕を、背中に回した両腕で優しく抱き留めてくれる。
「まだまだこれからよね、良?」



〜5〜

「次は何秒保つかな?」
「ひううっ、ああーっ!」
 クレナは肉棒を奥まで呑み込んだまま、腰を卑猥にくねらせた。クレナの肉
襞は、観客席で起こるウエーブのように規則的に蠢くこともあれば、それぞれ
が不規則に絡んでくることも、それらが同時に巻き起こることさえあった。膣
肉と襞を別々に操っているとしか思えないその所業は、まさに天女の名に相応
しい性技なのかもしれない。
「ああくっ! くふっ……はあぁっ!」
「こんなところでそんなに喘いじゃって……、まだ序の口でしょ?」
「かはっ、くぅ、ううう……そ、そんなこと、言われてもっ……くうぅっ!」
「ンッ、ほら、これくらい耐えないと……この先が辛いよ?」
 前後に動いていた腰が、一秒間に数センチずつという徐々に回転をはじめて
いた。昨日と同じ、コマ送りの快楽が性中枢を襲ってくる。
 根本を食い締められながら、蜜壺をヌチヌチと掻き回さされるペニスによっ
て、それぞれの方位で微妙に造りや圧力が異なっていることを理解させられた。
Gスポットの在処まで正確に把握することができたが、現状ではまったく意味
をなさない知識だ。
「ねえ、あたしのオマ×コ気持ちいい?」
「そっ、そんなの見れば……くうううっ!」
 その答えでは満足できないと言うように、ぎゅむむむっ、と肉洞の随意筋が
激しく締め上げてきた。
「だめよ、ちゃんと答えないと」
「き、気持ちいい……クレナのオマ×コ、気持ちよすぎる! はああああっ!?」
 言葉に出したせいで、脳が与えられた快楽を全て、受け入れはじめてしまっ
た。全身の感度が何倍も増したように感じられ、危うく暴発させそうになった。
「うふふっ、ありがと。お礼にちょっとした特技、チ×ポに披露してあげる」
 クレナは僕にしっかり腰を下ろし、下腹部を密着させると、それをはじめた。
「ひいいいいいっ!?」
 クレナの粘膜がざわめきはじめた。それもただ漠然と動いているのではない。
肉棒をしごくように、締め付け感が上下に移動するのだ。中に膣粘膜でできた
指が入っているのかと錯覚するほどはっきりとした感触を持って。
 幹の円周上に襞が巻き付き、ざわっざわっと強弱を伴いながら、上から下、
下から上へと肉棒を淫らに擦ってくる感覚は、あまりにも衝撃的だった。こん
な、天女にのみ許されたような性技に、ただ遅漏であるだけの人間が堪えられ
るはずもなかった。
「だめだっ、もう! うああっ、イクううううううっ!」
 ビュクッビュクッビュクッ!
 僕はそのクレナの特技を施され始めてから三秒と保たず、クレナの膣に向け
ての本日二度目の放精を始めてしまった。頭が白熱し、肉棒が肉襞を弾き飛ば
しながら膨張し、弾ける。三回目の射精に関わらず、一日で作られたことが信
じられないくらい大量の煮立った精液が、熱く軋む胎内へと噴き出していった。
その間もクレナの膣の動きはやまず、むしろ最後の一滴まで絞り出そうとして、
動きを速めてきていた。
「あっああっ、クレナっ、これ一回止めっ……はうう!」
「どうしたの? 連続でイッちゃいそう?」
 それを望んでいるかのような甘いささやき。四度目の精が精子製造所からグ
ルルッと危うく飛び出しそうになるが、
「くうううっ……」
 僕は自分でも驚くほどの忍耐力で、四度目の射精を堪えた。
「あふぅぅー……ふああ……」
「ふふっ、よく我慢できたね?」
 膣粘膜によるピストン刺激がピタリと止まった。
「ホントはね、これしながらでもオマ×コできるんだけど……今ヤっちゃった
らさすがにヤバイよね?」
「それは、か、かなり……やばい」
 普通の交合でも危険だっていうのに。
 怖いもの見たさは自分の安全が確保されていると思いこんでいるときにのみ
実行可能で、とてもではないが、いまその快感を味わおうとは思えない。



〜6〜

「んふ、今度は飛ばないでね?」
 クレナは数センチと離れていないところで笑う。
 微笑みの形でありながら残忍な色を滲ませている目の前の唇に、僕はゴクッ
と唾を呑んだ。
 実のところ、我慢できる快感点はとっくにオーバーしているし、常識に外れ
てペニスは射精するごとに敏感になってきているのだ。まるでいままで使われ
ていなかった神経からも、快楽信号が伝わり始めているかのように。
「ぜ、善処する……けど、さ……」
 全身は熱く火照っていて汗が滲んでいるし、昨日の体験と訓練で、昨日より
は意識に鮮明さがあるという程度に過ぎない状態だ。接触している肌面積の多
寡を考えてみれば、あまり成長していないかもしれない。
「手加減はあんまりしないよ? あたし、明日帰るんだから時間ないもんね」
「そうだ……ね」
「二度と味わえない快楽、感じさせてあげたいからさ」
「はは……運がいいのか悪いのか、だよ……」
「いいのよ、きっと」
 天女は動きやすいように、体勢を微調整した。それからしっかりと僕の頭を
胸に抱き寄せた。僕は胸乳に圧迫されながら、その瞬間を伏して待った。
「……ぁ、くっ……」
 クレナは行為開始の合図をするように、膣肉をキュッと締めた。ぼわっ、と
クレナの膣から送り込まれた熱が全身に灯った。
 は、始まる……。
「イクよ? ……いっぱい、感じてね?」
「ひっ、ひぁっ!」
 クレナが分泌した愛液と僕が放った精液でヌメついた天上の肉が、捕食対象
の男根を擦り始めた。有限であるはずなのに無限にも感じられる襞々が、敏感
な亀頭の裏側を踊りながらヌラヌラとなぞりあげていく。だが、主に引き上げ
られたはずの天女の肉は、愛撫を終えた後も男の分身からなかなか離れず、喰
いつきながら奥へと引き込もうと蠕動する。
「あぐぐっ、ぐぐぅー! はあああっ!」
 抜いた後の膣道が真空状態になっていることもあり、少しでも気を緩めたら
強引に精を吸い出されそうなくらい凄まじい吸引力だった。
「んっ……ここまで保ったね。んっ、はふ……じゃぁ、もう一回、挿入れるよ?」
 入り口付近の肉を僕の肉槍でこねまわした後、クレナはドロドロにとろけた
柔肉の中に再び僕を呑み込み始めた。
 柔らかいはずの肉襞が、今度こそ空洞を埋める肉を逃がさないようにと凶悪
な力で僕にしがみつき、快楽の底へと引きずり込んでくる。ぬちぬちぬちっ、
と襞肉を掻き分ける粘着質の音が僕の脳髄に直接吹き荒れた。加速的に明度が
増していく脳内で何かがばちちっと灼き切れる音が響き渡った。
「はううーっ! くっああああああっ!?」
 どぷっ、どぴゅるるっ、ぷぷっ……!
「あはぁー、熱いの出てきちゃった……!」
 快楽神経を直撃してきた官能によって、僕は成す術もなく四度目の絶頂を迎
えてしまう。白く濁った粘液がペニスの中を突き進んでいき、先端から勢いそ
のままに飛び出した。僕は何度も腰を揺らして、すでに僕の精子が暴れている
子宮口に、さらに援軍を送り込む。
「ああああ……ああ……ぁぁ……」
 精液は子宮を溢れ返させ、増した内圧で、濁汁が膣道と肉棒の間を逆流して
きた。膣口から飛び出した愛液と精液の混合液が太ももを流れ落ちていく。
「はううーっ……はあっ、はあっ、はあっ!」
 僕はクレナの胸の谷間に、熱い息を吐きかける。今回は幸いにも、なんとか
意識を保つことができたようだ。
 本当に幸いなのか、わからない、けどさ……。
 気絶した方が楽かもしれない。必死に耐えなければ意識がショートして、二
度と帰って来れなくなるような、この快楽地獄の中にいるよりはずっと……。
 けれど、そんな理性の声に逆らうように、僕の屹立はビクビクと震えて、さ
らなる快楽を求めている。男としての極致をもっと味わいたいと、天女の膣に
高らかに宣言している。
「その調子……もっと我慢して、愉しんでね?」
「はああっ!」
 天女の秘壺は射精を終えたペニスを慈しむように慰めてきた。優しい蠢動だ
ったにも関わらず、それは当然のように気の狂いそうな快感を生みだした。
「また一回じゃダメだからね?」



〜7〜

 ずりゅりゅっ……、クレナが腰を上げる。
「くっはああーっ! く、クレナっ、タンマっ!」
「だいじょーぶ。まだ、五発くらい余裕あるって……ハァ、ンッ!」
 クレナはサディスティックに唇を歪めると、無慈悲にも殴りつけるような勢
いで腰を落としてきた。
 ずちゅうぅぅーっ!
「ひがああああぁっ!」
 その速度のせいで、単位時間当たりの快楽量はこれまでで最高だった。快感
数値が気の違うような高さまで跳ね上がり、記録できる範囲から見事に突き抜
けてしまう。それでも、はしたなく叫びながら、僕はなんとか自分を維持した。
「すごい、ちゃんと我慢してる……。だったら、もっといっぱい、しごいてあ
げないとね……?」
 ぐちちちっ、ずぐぐっ……。
「あっはあああっ! ひぐぐぐーーーーっ!」
 初めてピストンがいったん停止なしで行われた。抜くときと入れるとき、違
う種類の快楽の波に連続して襲われ、我慢法の糸口すら掴めず僕のペニスは暴
れ出した。
 びゅくっ! ビュビュビュッ!
「はふうううううーっ!」
 肉棒は一度大きくしゃくりをあげた後、小刻みに微動して精子の弾を単発ず
つ打ち込んでいく。やがてペニスは震えるだけになり、子種は打ち止めになっ
た。それでも男根の絶頂運動は止まらず、しばしの間、前立腺が伸縮し続ける。
「ひっ、ひっ、ひっ……はあああぁぁぁーっ!」
 空気をほとんど失った僕の肺はむりやり膨らんで空気を取り込み、少し汗ば
んだクレナの体臭だけを確保して、さらに吐き出す。心臓がドクッドクッと激
しく脈を打ち酸素を要求するものの、射精衝動がおさまらないために酸素が取
り込めなかった。
 全身が酸欠状態になり、脳さえも麻痺しかけたころ、振り切っていた針が現
実の範囲内へと戻ってきた。
「はふっ、ふうっ、ふうっ……」
 僕は貪るように空気を吸い、酸素を補給する。
「あふぅ……そうそう、これくらいで飛んじゃだめ。次もしっかり堪えてね?」
「だっ、まだっ! はやいって!」
「そこまで気分出てるんだから、今しないと台無しよ」
「だめだって……」
 クレナが僕の言葉を聞いてくれるはずもない。
 ぬぷぷっぷぷっ!
「はっ、ひいいいいいーーっ!」
 どこが亀頭なのかわからないくらい全体が敏感になった肉棒が狭隘な肉洞を
妖しく滑り、ゼリー状になった入り口の花弁に左右を撫でられる。
 こういうのが快楽の正体の一つなのかもしれない。意志を無視され、強制さ
れる肉体と精神の隷属。加減がきかず、自分ではコントロールできない悦楽。
 ずちゅんっ!
「くはああああああぁぁーっ!」
 亀頭の溝に引っかかって上昇が止まったかと思うと、次の瞬間には根本まで
はまりこんでいる。
「いい滑り具合……もっと締めつけても大丈夫っぽいね」
「そ、そんなっ! はがあぁっ!」
 信じられないことに、ただでさえ窮屈だった肉壺がさらにきつくなった。膣
肉だけでなく、その周りにある筋肉全てが、下腹部を内側に押しやっているよ
うな、途方もない圧迫感。
 こんなんで、動かされたらっ……やばい!
 意識が消えそうになる恐怖に、身を捩らせるものの、腕と首を固定されてい
てはろくに動けない。わざとバランスを崩そうと思っても、すぐに修正される。
「逃げたらだめ」
「そっ、そんなこと、言ってもっ……!」
「良はあたしのこと嫌い? 受け入れてくれないの?」
「それ、問題がちがっ……!」
 答えなくてもクレナにはわかっているはずだった。クレナの締めつけに抵抗
するように肉棒は固さを増し、さらに膨らもうと足掻いている。それは受け入
れないどころか、積極的に望んでいる証拠。でもクレナは満足しない。
「答えてくれないなら、中でしごきながらピストンしちゃうよ? いい?」
 にゅくにゅくっ、と前触れのように微かに形成された肉の指が上下に動いた。
「待ってっ! す、好きだよ!」
 僕は慌てて叫んだ。けれど、それは脳が開放的になっている現状では言霊に
近い効果を現し、本当に感情を伴ってきた。
 ずっと交わっていたい。クレナの全てを受け入れたい。目の前の肢体、その
持ち主から離れたくない。それが叶わないなら、この快楽に取り殺されてもい
い……。
「よかった」
 ギュッとクレナは僕を抱き寄せる。
「エッチしてる相手には、そのときだけでもいいから、あたしのコト好きでい
て欲しいもんね」
「ハァ、ハァ……僕は好きだよ……クレナのこと」
 うわごとのように僕が言うと、クレナはクスクス笑い、僕の背筋をゾッとさ
せる。
「だったら、証明してみせて? 最後まで飛ばないことで……」



〜8〜

「さ、最後って……?」
「昨日と同じ、九回……かな?」
 じゃあ、あと、よ、四回も……?
「もう空打ちだと思うし、一回イクごとにいちいち止めたりしないからね?」
「そ、そんなっ! はあうっ!」
 ヌププッ! ずちゅっ! ぬぶっ! 
「ひはああああぁっ!」
 性器が奏でる音が、今度は連続して、止まらない。小気味いいリズムで腰が
上下し、粘膜の表面で起きた化学変化で生み出された快楽が、際限なく流入し
てくる。逃げ場のないそれは腰に蓄積し、ほんの数回のピストンで貯水量を上
回った。僕のペニスは自動的に設定されている、唯一の発散法を選択した。全
身から集められた快楽がそこに集中し、それらが生まれた女肉へと解き放つ。
 反動もまた大きかった。放出したのと同量の快感が脊髄へ逆流してきたのだ。
意識を司る部分に飛び入ってくる快楽は、僕の脳では理解しきれないほどの高
みにあった。
 ビククッ、びくびくびくっ!
 ほとんど生理的な反応として、勃起が痙攣する。精子が尽きた男根からは何
も出ていかなかった。そのかわりに、膣内の摩擦で煮えたぎった液体が、鈴口
から僕の体内になだれ込んできた。それは尿道から海面体内へ浸透し、僕の体
に取り込まれていく。
「あんっんっ……あと三回、頑張ってね」
 宣言したとおりに、クレナは僕がイッても動きを止めたりしなかった。膣内
へ戻された快楽を倍増させ、幾度にも分けて僕に送り返してくる。
 にゅちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ……。
「はあっ、ああっ、あああああぁーっ!」 
 今度はさっきよりも保った。クレナの膣から得た液体が、快楽を蓄積する役
割をしているらしい。けれどそれはいつか暴発するロシアンルーレットのごと
く、危うい印象がつきまとっている。風船に水を入れ続けるようなもの。いつ
かは確実に破れ、それまで存在していたことを無意味にする。あるいはそれが
快楽風船の役割なのかもしれない。僕に隠して多量の快楽物質を送り込み、内
部に溜めた全てを僕の全身へと撒き散らす……。
 はやく、はやくイカないと……!
 僕は逆にそう思い始めていた。昨日は膣に挿入している時間が短かったから、
天女の膣にこんな効果が秘められているなんてわからなかった。
 こんなことって……長く味わえば味わうほど……大変なことになるなんて…
…!
 クレナも知らない可能性がある。体験した男にしかわからない。
「ひっ、くっ、来るううっ! ああっ、でも我慢したら……あっ、がっはああ
ああっ!」
 ビククククククククッ!
「あはぁっ、んんぅ……すごい、イキ方……」
 今日の七度目は、射精とは思えないくらい、細かい痙攣だった。
「ああああっ、そんなっ! だめだっ! これ以上、吸収したらっ……!」
 あまりに速く強烈に揺れたために、天女の肉を刺激してしまい、挿入中常に
流れ込んで来ている魔性の液体の分泌を加速させてしまったらしい。もしかし
たら本気汁のように、天女が性的に高ぶらないと出てこないものなのかもしれ
ない。その天女の液体は本質的には濃酸性なようで、僕は自分の肉棒がオマ×
コの中で溶けていくような錯覚を覚えた。
「ハアッ、ハアッ! はうううっ、ああっ、あっ……!」
 僕は自分から射精に必要な快感をかき集めるために、クレナの腰に合わせて、
下から突き上げる。
「んっ! ふふっ、どうしたの、良? 急に積極的になって……」
「だ、だって、はやくイカないと……死ぬっ……!」
 きっとクレナは、僕があと二回イクまで抜いたりしない。僕が気絶してしま
ったとしても、回数まで続けるだろう。
「ああっ、はやくっ、早くっ! 来てくれ!」
 脳で肉棒で前立腺で嵐のように荒れ狂う快感。とっくに暴発していてもおか
しくないのに、僕はなかなか射精感を感じない。かといって、ペニスの感度が
落ちているわけでも、与えられる快感が減っているわけでもない。耐えられる
ギリギリの量だけを感じさせられ、あとは風船に溜まっていっているのだ。
「ああんっ……もう、そんなに急くと、君、飛んじゃうよ?」
 どっちが正しいのか僕にはわからない。腕を拘束され、僕からは動きにくい
状況が実は救いなのかもしれない。とはいえ、一度動き出した僕の腰は止まっ
たりはしなかった。立ち上がるような動きで蜜壺を突き上げ、座る動作で引き
抜く。腿の上五センチくらいでぶつかり合うのが一番適しているようで、その
ポイントを見つけてからはさらに反復運動が加速する。
「ああんっ、いい……んっ、はあ、ダメ……あたしが感じすぎたら……壊しち
ゃう……」
 堪えるようなクレナの声を聞きながら、僕は八回目を迎えることができた。
 ビククンッ、ビククッ、クク……。
 肉棒は歓喜によって強く揺れ、天女の肉洞を前後に歪める。
「ひっひゃあああああああぁぁぁーーっ!?」
 そして白い爆発が脳裏に起きた。決して忘れていたわけではない。溜め込ま
れた快楽が解き放たれる、この瞬間に耐えないといけないことを。酸素切れに
なったダイバーが急速に浮上する際にするように、僕は空気をはき続ける。ダ
イバーがそれによって守るのは肺胞だが、僕の場合は脳回路だ。一時的なシャ
ットダウンだけですめばいいけど、灼ききれたら……。
 問題は、膨張した空気を吐き出すのとは違うため、空気を吸い込む必要があ
ることだ。吸うという行為はいわゆる交感神経、興奮を司る神経を刺激してし
まう。できるだけ短縮し、それを長い時間に分けて音という形で吐き続ける。
 八度目の絶頂は数分間にも及んだ。


〜9〜

「くはっ! はあっ!」
 体中がガクガク震わせながら、僕はなんとか山場を乗り切ったことを確信し
た。
「すううっ……ああっ!?」
 深呼吸している最中で、気づく。収まったはずの射精振動が、吸った勢いで
復活してしまった。
 考えてみれば、単純な話。イッている最中も、僕とクレナは動き続けていて、
射精で半減させたはずの快楽を射精中にまた溜めてしまった……というだけの
ことだ。
 ビク、ビククククククゥッ!
 ほとんど何の準備もなく、僕は快楽の爆発に直撃されてしまった。
「はああああああぁぁぁーーっ!?」
 色彩が消え、燃え尽きる星のように、白く輝いていく。
 や、やばいーっ!?
 僕は直感的に悟った。
「これで九回目だよ……がんばって」
 九回目に達したことで、クレナはぴったりと腰を落としたまま動きを止めて
くれた。これで、あとは僕がこれを堪えるだけ……。
「くうううっ……あはっ……ひぎぎーっ……!」
 なんとか、耐えないとっ!
 これで最後なんだから……!
 飛びそうになるのを必死に抑えつけながら、僕は永遠にも思えるその時間に
耐え続けた。汗が噴き出て、全身を濡らしていく。やがて、スーッと絶頂の波
が引いていった。膣には挿入したままだから快感は続いているけど、それでも
意識の飛翔感と消失感は落ち着いた。
「はっ! はっ! はっ! はああぁー……!」
 ぼすっとクレナの胸に顔を埋めた。
 耐えた……!
 もう何のために我慢したのかさえ覚えていない。けど、とにかく、我慢でき
たという達成感が、汗ばんだ全身に心地よく満ちていった。
「よくがんばったね……?」
 クレナがゆっくりと腰を上げていく。
 ずぬぬぬ……。
「あふぅ……!」
 天女の肉壺にはいまだに蜜が溢れていて、気持ちよくヌメっている。
 何分経ったのかな、とぼんやり思ったそのとき、
 ズチュゥッ……!
「はあうっ!?」
 抜かれるとばかり思っていたのに、肉壺が降ってきた。九度の絶頂を終えた
僕の肉棒が、膣の中で苦しげに喘ぐ。
「ど、どうして……」
 弾力ある尻肉を腿の上で感じながら、僕は泣きそうな声を出した。
 クレナは僕の顔を上向きにすると、額にキスをしてきた。
「昨日と同じじゃ、満足できないでしょ? もう一回だけ、してあげる」
「あ……ああ……」
 天上の微笑みを残し、クレナは肉のピストン運動を再開した。   
「ひっ、ひいいいいいいーーっ!!」



〜10〜

 結局、そのまま十回目で飛ばされてしまったらしい。
 ホッとした後の絶頂、その落差が大きな要因だと思う。
 今日の場合は、トイレで寝るわけにも行かず、すぐに起こされた。記憶が不
明瞭になっていたけど、生きていてよかったと心底思った。
 ……そもそも無理があるんだよな。
 十回。二日で十九回? 
 冷静に数えてみれば、あり得なすぎる。言葉遣いがおかしくなるほどに。
「ねー、悪かったってば」
 学食で昼食を食べているとき、向かいのクレナが言った。単に喋る元気が出
てきていないというだけの話なんだけど、それまで一言も喋らなかったから、
僕が怒っていると思ったらしい。
 怒ってないと言えば、嘘になるんだけど……。
 熱でピンぼけした記憶によると、九回耐えたらエッチをやめるとはクレナは
言っていない。それに本当の最後というのは、クレナがイッたときのはずだ。
 してあげる、と言っているのだから、僕は遠慮なくイッていいはずだ……け
ど、一人で感じているだけというのは申し訳ない気分になる。
 まともに感じられて、夢中になられれば、壊されるらしいんだけどね……。
「四捨五入したらどっちも十回でしょ?」
「……どっちも約十回って言いたいわけ?」
「うん、そうそう。大した差じゃないよね」
「限界の時からの一回は、大したことあるよね」
「筋トレって、もうできない、ってところから何回かやると効果が高いもんね」
「…………」
「ごめんって。あ、ほら、カマボコあげるから許して?」
「安っ……」
 しかも僕のおごりのラーメンだし。
「でもねー、他にあたしがあげられるモノってないし……」
 クレナは考えながら、ズズズッと麺をすする。
「ほぐほぐ……りゃあ、こういうのはろう?」
「……いちおー訊いとくけど、どんなことかな」
「今日の夕食、あたしが作る」
 僕はその提案に驚く。
「なに、その顔」
「すごくまともな提案だなーって思ってさ」
 僕が言うと、クレナが不機嫌そうな顔をした。
「はは、ごめんごめん。でもやっぱり、なんて言うか、意外だったから」
「あたしだって女だし料理くらいするのよ」
 女だし、というところがけっこう保守的な感じだ。天女杯なんて大会が行わ
れるんだから、向こうはそういう世界なのかもしれない。
「そんなに下手そうに見える? エッチほどは上手くないけど、そんなにひど
くないよ?」
「ごふっ……。料理に外見って関係ないと思うけど?」
 バラエティーで女優が変な料理を作っているところを見ると、特に。ああい
うことを、本気でやってるなら、だけど。
「そそ。努力とセンスだよね」
 似合わない……。
「あ、似合わないとか思ったでしょ」
「うぐ……」
「言ったよね。あたし、まじめだって」
 そう言ったクレナの表情は真剣。嘘ではなさそうな雰囲気だ。エッチで残酷
でも、それが真面目と相反する性質というわけではない。それに相反していて
も、人間には形容系の言葉をいくらつけたって構わないのだ。
「今日の夕食は送別パーティーにしとこうか?」
「ほんほに?」
 クレナはすすっていた麺を途中で止める。
「天女杯にマナーっていう種目はないわけ?」
「だいじょうぶ、要領はいいほうだから」
「それはよくわかる」
 社交場に出てもそつなく上手くやりそうだ。
 ドレスとか、似合うだろなー。
 色は、血のような紅……。
 安易すぎるかな?
「あたし、先に帰って準備してるね」


〜11〜

 午後七時。なんとか講義とバイトを終えて、僕は帰路についていた。
「送別パーティーか……」
 ホント、やばいよなー。
 また会うのが楽しみで、その反面、もしいなかったらどうしよう……なんて
思ってしまうその事実が。
 なにより、明日、別れなければいけないというその予定が……。
「ふう……」
 なぜか、ため息が漏れた。
 クレナが待っているはずのアパートが近づいてくる。
 窓から灯りが漏れていた。
 鼻歌が聞こえてきそうな明るさに思えた。
「よし」
 自分の部屋に行くのに気合い入れてどうする、って感じだけど、僕は気を取
り直して部屋へ向かう。
 インターホンを押してからドアを開けた。
「ただいまー!」
「んー、おかえり」
 髪を一つにまとめたクレナが出てくる。服が変わっていた。
 僕のTシャツとジーンズ。丈上げしていないジーンズなんだけど、クレナに
はそれがぴったり合うようだ。で、ウエストがだぼだぼ。Tシャツは、ちょっ
と胸がきつそうなくらいかな。
 スタイル良すぎ、と僕は靴を脱ぎながら思った。
「いい匂い……」
 家にいたころはこういうこともあったけど、一人暮らしを始めてからは初め
てだ。
「でしょ?」
 クレナに手を引かれる。ビクッと股間が反応してしまうのは相変わらず。
「おおー……」
 勉強机に、数えるほどしか使ったことのないテーブルクロスが引かれ、赤ワ
インとグラスが用意されている。何とか揃っていたナイフとフォーク。脇にサ
ラダ。中央にはベッドの側に置いてあったライトスタンド。
「とりあえず、乾杯しよっか」
 クレナは僕を座らせて、赤ワインを手にした。果物ナイフで封を開け……。
「ソムリエナイフとかコルクスクリューってないよね?」
「ないと思うよ。ワインってあんまり呑まないからさ……」
 普段はビールが多くて、次に缶チューハイ。しがない大学生としてはごく一
般的な酒生活だ。
「ん、しゃーないね」
 コルクから少し離れたところに手のひらを置く。すると、コルクがだんだん
と持ち上がっていく。ポンッと音がしたかと思うと、磁石に鉄がひっつくよう
に、手のひらにコルク栓が吸い付いていた。
「便利だなぁ……」
 ワインを飲まない理由……一度友人たちと開けたときに、スクリューでぶち
抜いてしまったことが、ちょっとしたトラウマになっていたりする。
「内緒よ」
 クレナは笑って言うと、ナプキンで瓶の口を軽く拭うと、グラスに注ぎ始め
る。ワイングラスでないのはご愛敬。あんなかさばるモノ、置いとけない。ワ
イン用でなくても、同じ型のグラスがあったのは、よかったんだけど……。
 ま、今みたいな状況だと、小難しいマナーなんかどうでもいいけどさ。
 電灯を消し、ライトスタンドの明かりの中、グラスを持つ。
「何に乾杯する?」
 クレナの問いに、ちょっと考える。
「天女杯の必勝を期して、で」
「オッケー。乾杯っ!」
 テーブルの中央で音を立て、二口くらいずつ口をつける。
 電気をつけ、クレナはキッチンから、料理が盛られた皿を運んでくる。
「ほい、鶏肉のソテー。簡単料理だけど」
 きつね色の焼き色がついた見た目、オリーブオイルやセージなどの香りも食
欲をそそった。
「君が時間通りに帰ってきたから、ちょうどいい蒸し具合だと思うよ」
 クレナはご飯をお皿によそってきた。
「ま、予算内だとこんなもんでしょ?」
「じゅうぶん。ちょっとしたレストランだね」
「それは大げさ。でもそう言ってくれるんなら、うれしい。いいよ、味見て?」
「じゃ、いただきます」
 僕はナイフでほどよく柔らかくなった肉を切る。味は悪かろうはずがない。
クレナの皿の上にある鶏肉は、端がすでに欠けている。
「ん、うまい」
 予想通り、美味だった。
「かなり上位にランクされるかな」
「何のランキングで?」
「僕の中の、うまい食事ランキング」
「……同情した方がいい?」
「レストランよりこういう雰囲気の方が好きだし、料理の味はよくて、相手は
天女。極上の食事じゃないかな?」
「そぉ?」
「僕にとっては、だけどね……」
 僕は小さな声で付け足した。
「うん、我ながら上出来……あたしにとっても、そんなに悪くないよ」
 クレナが言う。
「ほら、あたしって、ものすごい美人じゃない?」
「自分で言うのはどうかなーって思うけど、文句なく正しい。でも、天女って
美人ばっかりってわけじゃ……?」
「ない。だって、この世界と根本から違うわけじゃないもの。まあ平均値は上、
かもしれないけど……」
 安心したような気もするが、むしろクレナ個人に対する畏れが増したように
思えた。
 僕らは食事をしながら、ゆっくりと会話を続ける。
「でね。あたし、こんなだから、付き合った男には、けっこーいいレストラン
に連れてかれるわけ」
「学生だって言ってなかった?」
「付き合う相手が学生とは限らないでしょ?」
「そりゃそうだ」
「年上と付き合ってて別れるでしょ。そうすると……」
「それを知ってる同級生が無理するわけか」
「ほうほう。でもそういうレストランて服装も規定されてるし……喋りにくい
でしょ? 退屈なんだよね」
「ご飯は食べながらが一番?」
「そ。だから昨日みたいな居酒屋、好きなんだけどねー。付き合った男はけっ
こう見栄っぱりが多くて、そゆとこテコでも連れてかない」
「……意地?」
「食事は一流レストラン、ホテルはスイート……とまではいかないけど、高級
ホテルの一室。なんてことしてたら、会える回数も少なくなるし……まー、遊
びだからそれでもいいんだけどね?」
「遊び?」
「天女杯出るって決めてたからねー。だったら、結婚とか考えられないでしょ?」
「三年間だっけ、任期は」
 千日修行みたいだ……っていうのはおいとくにしても、三年は長い。例えば
三年間の海外留学、しかも連絡なしという条件でつきあえるカップルは、そう
はいないと思う。
「じゃあ、向こうに今カレシは?」
「別れたばっか」
「そっか」
 じゃあ僕と同じ……わけじゃないよな、やっぱ。
 僕の場合、真剣にフラレてるしなぁ……というかフラレ側とフリ側は根本的
に違う? 
「まあ、どーでもいいでしょ、終わったカンケイだもんね」
「そうだね……」
「……フラレたおかげであたしに会えたんだよ? ね?」
「あ、いや。別にフラレたショックが残ってるわけじゃないんだ」
 クレナは小さく首を傾げた。
「あれ? なら、君が暗くなるところあった?」
 僕はワインを一口。
「何でもない。じゃあ、こういう家庭的なパーティーみたいなのは少ないんだ
……?」
「うん、そう。あんまり、料理の腕を披露する機会もなくて。こういうの、楽
しいわけ」
 そう……今日の夕食は、文句なく楽しかった。
 だから……。



〜12〜

「明日、帰っちゃうんだよな……?」
 僕は暗い天井を見ながら、つぶやくように言った。
「帰るよ。お昼前に」
 当然のごとく、隣にいるクレナはそう答える。
 今日は抱きついてはいないので、快感はそれほどでもない。腕は触れている
から、勃起はしているけど。
「いくら期限付きでも……好きでもないのに、結婚なんて」
 もしかしたら、こんなことを口に出したのは、興奮のせいで気が大きくなっ
ていたからかもしれない。
「君は、楽に暮らせるお金、欲しくない?」
 特に何の感情も込めない、普段の口調。
「それ以外に何か欲しいモノあるの?」
「やりたいこととか、仕事とか……」
「それ、三年仕えた後にすればいいよね」
「僕らの年で三年って……長いよ」
「君はどうして大学に通ってるの?」
 グッと喉に何かが詰まった。
「なんとなく? 漠然と? やりたいことを見つけるため? それって、何か
意味あるの?」
 痛いところをつかれた……今の僕には、夢も目的もない。
「あたしが天女杯に勝ったら、三年後……あたしの同期が大学卒業するのと同
時に、一生かかって稼ぐお金が手に入るの。そのお金があったら、仕事しない
でも、一生それなりの暮らしができる。やりたいことがあったら、自分で始め
られる……違う?」
 ……宝くじ。
 僕が思い浮かべたのはそんな言葉だった。
 宝くじは夢。
 どうして?
 大金が当たるからに決まっている。
 その大金で買えるのが、夢……。
 クレナはただ、その宝くじの当選番号を決める矢を、自分で射ようとしてい
るだけ……。
「参加者は毎年千組以上……制度が有益かどうかは、社会が判断してるわ」
「……ごめん。……もう何も、言わない」
 僕はごろりとクレナに背を向けた。
「おやすみ……」
 目を瞑っても、僕はなかなか寝付けなかった。





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