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第一章


〜1〜

 街に出て、僕はあてもなくぶらつく。
「はぁーあ……いーんだけどさ、別に……」
 と言ってみるものの、よくはない。
 実際、かなりショックだった。
 千紗は初めての相手だったわけだし。
 そりゃ、このまま結婚なんて夢というか現実を望んではいなかったけどさ……。
「……なんか腹減ってきちゃったよ」
 メシが素通りしてった感じだ……軽くサンドイッチだったから昇華済みでも変じゃない
けど。で、このままやけ食いすると太るはめになるわけか。
 でもまー、今日くらいいーよな。
「この際だし、パァーッと焼き肉でもいってみっか!」
「へえ。君、焼き肉食べにいくの?」
「はい?」
 僕は思わず首を動かす。
「こっちこっち」
 斜め前方でヒラヒラと手のひらが動いた。
 ちょうど僕と同じくらいの高さに顔があった。
 衝撃と言えば、衝撃だった。
 鳶色の長い髪に白い肌。明るく笑っているけど、その顔の造形はテレビでも見たことが
ないくらい整っていることがわかる。美少女ではなく美女でもなく、その間の年齢層が呼
ばれる美人という形容がぴったりはまる顔立ちだ。
 ワンピースの下のプロポーションも抜群。腰が高く、長身ながらほっそりとしているの
で、女の部分が余計に強調されて目に飛び込んでくる。千紗は可もなく不可もなくのBカ
ップだったけど、この美人さんはDはありそうだ。その魅力的なバストは形よく張り出し
ていて、ワンピースの生地につんと二つの突起が……。
 ……って、この人、もしかしてブラしてない?
「焼き肉食べにいくんだよね?」
「え、そうだけど」
「おごってくんない?」
 ……なんだそれ。
「ほら、あたしって天女だから、こっちの世界のお金持ってないの」
 もしかして、危ない人……?
 それとも新手のたかり?
 天女云々はともかく、キレイだってことに違いはないんだけど……。
「そりゃーね、お金出せないこともないけど、あとあと問題ありだから」
「はぁ。葉っぱに戻るとか」
「たぬき……じゃなくて天女、ってこっちの人は呼んでるよね」
「じゃあ僕らは地男だ」
「で、あたしたちの世界には、こっちの世界の通貨を偽造しちゃだめっていう法律がある
わけ。あ、もちろん天界の通貨もだめだけど」
「そうですね、それじゃ、僕いきますんで」
 …………。
 ……………………。
「なんでついて来るんだよ」
「あたし、クレナって言うんだけど」
「はいはい、天女のクレナさんね」
「焼き肉ごちそうしてくれたら、お礼に、エッチしてあげる」
「な、なんでそうなるわけっ?」
「だって、それが目的でこっちに来たから」
「だからって初対面の人間にいきなり、エッチさせてあげる、はおかしいって」
「違うって。させてあげるんじゃなくて、エッチしてあげるの」
 クレナはそこが重要といいたげに、微妙なところにこだわる。
「要するにおさわり禁止のフーゾクってことね」
「君、エッチ嫌い? あたしとしたくない?」
「まあ、願ってもない話なんだけど……その……エッチのことで彼女にフラれたばっかり
なんだよね、僕」
「そうなの? いいよ、下手でも。あたしがしてあげるんだから」
「そうじゃなくて、なかなか射精できなくて、嫌がられたんだ」
「遅漏なの? ふうん。いいよ、気にしないで。むしろ、あたしとしては歓迎だから」
「へ……そう?」
「ということで、話も決まったから、焼き肉おごってね」
 と、クレナが手を取ってきた。
 うっ……。
 柔らかい手で握られると、痺れるような感覚が手のひらから全身に伝わってきた。
 股間に血が集まっていく。
 手を繋いだだけで勃起するなんて……溜まりすぎかな、僕。
「じゃ、行こう、焼き肉♪」



〜2〜

 自称クレナは自称19歳で、僕より一つ年上だった。
「あのー、おごりだからって、いくらなんでも頼みすぎなんじゃ……」
 並べられた皿の数にどよよ〜んっとなる。
「そーかなー。とりあえず全種類食べたくならない?」
「だったら盛り合わせにすればよかったのに」
「おいしーのが見つかったらもの足りなくなるじゃない」
「追加オーダーでいいと思うけど」
「ほら、忙しそうだし」
「まあそれは認めるけど」
 昼時だけあってさすがに混雑している。
 そこら中で、ジューッという食欲をそそる音と匂い。
「……食べ放題の方がやすかった……って、この店ないか」
「そんなこと気にしないで。焼いてあげるから。どれ?」
「……カルビ」
「これ?」
「それはロースだね」
「書いておいてくれないとわからないよね?」
「数が多いせいだよ。……カルタみたいだ」
「テキトーでいいかな?」
「高いやつから。残ったらもったいないし」
「持って帰ればいいじゃないの」
「……そうだね」
 ジュウウーッ……。
 クレナが適当に選んだ肉をのせていく。
 一人にさせるのもどうかなーと思い、僕も自分の傍にある皿から肉を取る。
 赤い肉が、色を変えていく。
 肉汁がこぼれて音と煙を立てる。
 体に悪そうな食べ物は、実においしそうだ。
「あたしさ、天女杯に出るんだよね」
「てんにょはい? サッカーの?」
「天界のね、大統領みたいな人が開く大会。あ、そろそろ、いいかな」
「よさげだね」
 クレナは、ちょこっとタレにつけて一口で頬張る。
「んーっ、おいひー」
 僕は空いたスペースに肉をのせる……皿の上には肉が九割、野菜はキムチ含めて一割。
「どういう大会なわけ?」
「えーとね、三年に一回ある、大統領の奥さんを決める大会」
「三年に一回ってことは……」
「三年だけ、結婚するの」
 ……ハーレムじゃないのか。
「はふ、あつ……。三年間おつとめしたら、お金がもらえる。この国で言うと、十億くら
い」
「年収三億……」
 僕もそろそろ食べ始めることにした。
「突然そんな話をした理由はなに?」
「えーほね、天女杯は女と男がペアで参加するの」
「ふーん。もしかして、その男の方になれとか言わないよね」
 クレナは食べながら首を振る。
「こっちの世界の人はなれない決まり」
「それはよかった」
「でね、天女杯は相手の男を先に三回イカせたほうが勝ちのトーナメント方式なのね」
「……イカせたほうがって?」
「射精でしょ、ふつう」
「そっか」
 納得してどうする……。
「とにかく、性技を競う大会なわけ。で、君には練習台になってもらおっかな、って思っ
て」
「僕はモルモットかい……」
「そーゆうこと。こっちの人は参加できないけど、練習はオッケーなの。向こうの男は、
練習がだめ。参加登録したら、監視されちゃうから」
「監視? どうしてさ」
「王様の妻になろーって女がさ、そう決めてからもオトコを喰いまくってちゃ、問題じゃ
ない?」
「そうかも。でもこっちの男はいいの?」
「男の範疇外だから」
「うーん……」
「あたし真面目だから。それでも練習できるならやっておこー、って。あ、焦げちゃう焦
げちゃう」
 クレナは慌てて焼けた肉を取り皿へあげていく。
 まじめ?
「はぐはぐ……とりあえず今は、おなかいっぱいにしないとね」
 ……実際、この人が天女だったら、どえらい話だけど。
 イメージが違うというより、容姿以外は真逆へ変換されてしまう。それだけですむ問題
じゃない気もするけど。
「ふぇ、ひみもはべなよ。ひみのおごひなんらひ」
「……食べながら喋らないように」



〜3〜

「そんじゃ、そろそろいこっか」
 食休みと腹ごなしがてらに、しばらく辺りをぶらついたところで、クレナが僕の肘を引
っ張った。
「ホテルでいいんだよね? また君のおごりになっちゃうけど」
「あ、本気なんだ」
「あれ。騙されてるとか思ってた?」
「まー、実は少し。このまま、さようならかなーって」
 別にそれでもよかった。というより、出会った者同士ならそれくらいが自然だとは思う。
でも焼き肉のおかげで財布がやばい。ホテル代も休憩ならなんとか、てな懐具合だ。千紗
の誕生日が近くてプレゼント代溜めてたから、極貧生活だけは免れそうだけど……元を取
りたい気分があるようなないような。
「なるほどー。ふつーの感覚だと思うよ。そうだよね、疑うよね」
 クレナは反省したような声を出した。
「おなか減ってて、のうみそ鈍ってたかも」
「そんな無計画な……っていうか、通貨交換できんの?」
「できるけど、この国とは物価が5倍は違うみたい。一ヶ月のバイト代だとさっきの焼き
肉代払えないと思うよ。あ、あたし、こう見えても向こうじゃ学生なんだけどね」
「それでよく来ようと……」
「この国だと容姿的に目立たないかなって。地上文学でこの国の言葉も習ってたしね。そ
れにさ、お金いっぱい持ってたらさ、天女杯なんて出なくていいでしょ?」
「まあ、そりゃそうだ」
「それはそうと、どこのホテル行くの? 行きつけとかあるの?」
「あっても、行きたくない」
「あー。じゃ、その辺のでテキトーに選んだらいっか」
 なんだかんだで、僕らの進行方向は繁華街裏手のホテル街。すれ違う人間が羨ましそう
な視線を僕に向けていくのが、現金だけど、気分がいい。
「ここでいい?」
 クレナが立ち止まる。
「うえ? あ、いいよ」
「ということで」
 クレナは僕をリードして、中へ引っ張っていく。
 無人のフロントを物珍しそうに見回す。
「やっぱりこっちの世界って進んでるよね」
「そう?」
「向こうだとよくおばちゃんがいるんだよね」
「こっちでもあると思うけど」
「……この部屋のボタン押したらいいの?」
「どーぞ。お好きなとこで」
「んー……じゃ、ここ」
 出てきたカードを持って、エレベーターへ。
 ……それにしても、つい二時間前にフラれた奴がなにやってんだか。
 別にやけになってるわけじゃないけどさ。
 千紗のことはもうどうでもいいのかって?
 よくはないけど、ああ言われて、嬉しそうに去られたらさ……幸せになってとか、楽し
んでとか、くらいしか言えることないじゃないか。
 ってか、やば。
 かなりドキドキしてきた。
 考えてみれば、人数的には二人目なんだよな……。
「シャワーくらい浴びるべきだよね」
 部屋へ入ってから、クレナは自分の髪の毛に鼻を近づける。
 僕は自分の服の匂いを嗅いでみる。
 焼き肉くさい。
「……一緒に浴びる?」



〜4〜

 うわ、すご……。
 先に入ったクレナの体を目にして、僕は生唾を呑み込む。
 お湯を弾いている肌は本当に白くてすべすべそうで、胸は思っていた以上にボリューム
があるし、腰の湾曲もすばらしい。適度に肉が付いているヒップ、そこから伸びる脚はス
ラリと引き締まっている。外国のファッションショーでも通用しそうな芸術的な肢体。
 だけど、そこには脳に直接響いてくる不思議な淫靡さが漂っていて、僕は完全に勃起し
てしまっていた。
「……もう勃ってるの? あたしのハダカ見ただけで感じちゃった?」
「そうみたいだね」
 髪と同じ色の陰毛を束ねながら、お湯が流れ落ちていく様子に、僕はペニスを震わせる。
「背中流してあげるから、はやくおいでよ」
 僕は誘われるがままにバスルームへ入った。クレナに背中を向けて座る。
「オッパイでしてあげたいところなんだけど、それはまたの機会ということで」
 クレナはスポンジで僕の体を優しく洗い始める。
「また、って?」
「明々後日の昼までが滞在予定なんだけど、今日と明日、泊まるところなくて。良って一
人暮らし?」
 クレナに名前を呼ばれると、妖しい心地よさが込み上げてきた。ゾクゾクと性感の中心
が震える。
「そうだけど……どうして?」
 先を予測しながらも、あえて訊いた。
「泊めてくんない? もちろん明日もしてあげるから」
「……いいよ。二日くらいなら。それ以上はしんどいけど」
「それは保証するよ、ちゃんと帰る。天女杯って、一生に一回しか出られないんだもの。
さて、後顧の憂いも消えたということで……」
 クレナは丁寧に泡を流してくれる。
 それからクレナは自分の体を手早く洗い始めた。前と両手足。いったん流してから、長
い髪をまとめて前へ持っていった。
「背中お願いしていい?」
 色っぽい肩胛骨から、腰へ向けてスポンジを這わしていく。だいたい終わると、クレナ
は髪を後ろへ戻した。
 それから、頭からお湯を浴びる。湿り気を帯びていた髪の毛が、水に濡れて、黒っぽく
色を変えていく。全身の泡も一緒に流れ落ちていった。
「乾かすの時間かかるんじゃ……」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
 気楽にいって、クレナはお湯を止める。
「ちょっと離れててね、乾かすから」
 濡れ髪を掻き上げながら、クレナは僕に背中を向けた。僕は一歩下がる。
「……ほい」
 小さな掛け声。
 すると……。
「おわっ!」
 ぼふっ、とクレナの髪の毛から蒸気がたった。髪にまとわりついていた水分が一気に蒸
発したらしい。いい具合に乾いた鳶色の髪が、クレナの背中でさらりと揺れた。
 ……まじすか。
 僕はそのとき初めて、クレナが本物なんだと理解した。
 クレナは髪の匂いを確かめると、
「よしオッケー」
 と振り返る。その拍子に、髪が羽根のように広がる。
「じゃ、ベッド行こ」
 僕はその明るい天女の美貌に、畏怖を抱いた。



〜5〜

 バスローブを脱ぎ捨てた天女がゆっくりと近づいてくる。
 畏怖を感じていても、僕の男根に衰えはなかった。それどころか、さらに大きさを増し
ていくようにさえ思える。信じられないことに、すでに先走りさえ滲ませていた。
 僕はクレナから発せられる何かに押されるように、ベッドの端に尻餅をついた。見上げ
る形になる。きっとこれが僕とクレナの本来の関係なんだ、と思った。
「知識しかないから、どうなるかわかんないけど……きっと、君は楽しめると思うよ?」
 彼女の美しい鳶色の瞳は、羞恥心のカケラすらなく、好奇心のみを滲ませている。実験
動物に向けるような、残酷でいて全てを受け入れてくれるような慈愛に満ちた視線だ。そ
れが勃起に向けられるだけで、僕は精液が吸い出されていくような錯覚を覚える。柔らか
く笑んでいるのにどこか魔性を感じさせる朱い唇に、もしもペニスを銜えられたらと思う
だけで漏らしそうになる。あの鳶色の茂みの奥にある秘唇が銜え込まれたらと思うと、鳥
肌が立ってきた。
「まずは手でしてあげる」
 甘さを帯びた声を紡ぎ、クレナは僕にもバスローブを脱ぐように言った。
 前をはだけると、ビンビンになっているペニスがあらためて天女の前に晒される。見下
ろされると、本格的に頭が白熱してきた。
「寝てくれる?」
 言われるがままに、僕は行動する。足をベッドに引っ張り上げて、仰向けに転がった。
「じゃ、あたしも」
 添い寝するような形で、クレナは僕の右隣に肢体を寝かせた。
「ううっ……」
 素肌が触れ合っただけで、僕は背筋を震わせた。手を繋いだときとは段違いの官能が、
より広い面積で触れている天女の肌から直接伝わってくる。というより、強制的に送り込
まれてるっていう感じだ。
 弾力のある乳房が脇を刺激し、太ももをしっとりとした足で絡めとられ……そして、白
くてしなやかな指がペニスへと伸びていく。天女の美しい指が、僕にはエモノを捕食する
蛇の牙のように思えた。
 クレナの指が一瞬、僕のペニスの手前で躊躇したような動きをみせた。
「……いくよ?」
 天女はそう宣言してから、熱い肉棒に冷ややかな指が巻き付けた。その途端、
「うわあああっ!」
 僕は思わず悲鳴をあげた。感じたことがないほどの快感がペニスから流れ込んできて、
背骨を痺れさせる。それを直接受けているペニスは、生き物のようにビクンビクンッと震
え出していた。
「くぅぅ……こんな、こんなことって……!」
 クレナはただサオを握っているだけ。動かしてもいない、そんなに力を込めてもいない。
それなのに……。僕は我慢しないとイッてしまいそうになっていた。
 僕はシーツを握り締めて、その強烈な快感が頭に登ってこないように、必死に押しとど
める。ここで射精してしまうのはいくらなんでも避けたい……だけど、射精感は一向に遠
のいていかない。
「うううっ、どうして……こんなに……」
 クレナが天女だから……?
 他に説明のしようがない気がした。僕のペニスは握られただけで、すでに限界ラインを
超えるか超えないかのところにいて、辛うじて射精だけはまぬがれているような状態にま
で追いつめられてしまっていたんだから。
「……だいじょうぶ?」
 天女が僕の顔を覗き込んでくる。
「あ、あ……うう……」
 僕は呻きだけを返す。返答する余裕がなかった。それどころか、言葉の意味さえきちん
と捉えられているかもわからなかった。
「うふふ、けっこう大きいね、君の。形もいい感じだし……」
「うああああっ!」
 クレナの指が微かに動いただけで、快感が一気に膨んだ。
「硬さも、抜群……」
「くあっ! あっあああ!」
 勃起肉をクニクニとこねまわされ、完全に余裕がなくなる。
「チ×ポの奥が……精巣がびくびくしてる。イキそう?」
「ちょっ、待っ……、それ以上、指っ、動かしたらっ……」
「じゃあ、かわいく勃ってるここにしたげるね……んちゅ……」
 乳首を口に含まれた。びりびりびりっと甘い痺れがその一点から全身へ広がり、一カ所
に向かって集束しはじめた。
「ああっ、そんな、やばっ、もうっ……くあああああっ!」
 快感がペニスへ直撃し、瞬時に脳へと駆け登ってきた。その瞬間。
 びゅくびゅくびゅくっ!
 我慢の限界を超えた男根がクレナに握られたまま激しく飛び跳ね、精液を吐瀉しはじめ
た。
「ああっ、ああああああああーっ!」
 絶頂を迎えた肉棒は自分の意志では制御できず、クレナの手を押しのけんとばかりに痙
攣しながら、白濁を吐き続けた。熱い精液がボタボタと顔や胸に降ってきて、あっという
間に性臭を僕らの間に充満させていく。
「もっと出していいよ」
 クレナは射精中のペニスを、加減なしにしごいてきた。
「ぐううっ! うあああっ! ああああっ!」
 幹を天女の指が上下するたびに何かが送り込まれ、何かが吸い出されていく。これまで
経験してきた絶頂が、快感のほんの入り口だったと悟らせるほどの暴力的な気持ちよさ。
そして一度目の射精が終わる前に、二度目の射精が襲いかかってきた。
「うはあああああああーーーっ!」
 一度目と変わらない量と濃さの精液が勢いよく噴出する。初めて経験する休みなしの連
続射精。真っ白になった僕は腰を突き上げながら仰け反り、小刻みに痙攣する自分の体を
さらに精液まみれにした。
「かふうううっ! ううううーっ! くはぁぁぁー……」
 その射精が終わった後、僕はしばらく指一本動かせなかった。



〜6〜

「はっ、はっ、はっ……」
 ぼんやりと戻ってきた意識で、僕はなんとなく理解した。
 こっちの世界の男が、天女杯に参加できないわけを……。
 きっと、向こうの男は普段僕らがしているエッチくらいの快感指数なんだろう。けど、
天女はこっちの世界の男に対しては、これほどの快感を与えられる。
 この調子でもう一回射精すれば終わりだ。もしもその天女が本気なら、三回出させるの
に一分かからないかもしれない……それでは勝負にならない。
 それが不可能でないことを示すように、クレナに握られたままの僕のペニスは、二回射
精した直後でありながらいまだ勃起を保っているのだ。
「我慢した方だと思うよ」
 クレナが僕の頬に飛び散った精液を指で拭った。
「文献にはさ、こっちの男はペニスを撫でられただけでイッちゃう、って書いてあったか
ら。どれだけ慣らしても、オマ×コの入り口に触っただけで果てちゃう、ってね」
 天女は恐ろしいことを言いながら、指についた僕の精液を舐め取った。直接顔を舐めて
きて、首から胸へと徐々に紅い舌が下がっていく。もちろん一舐めされるごとに、天女の
舌粘膜が肌に触れるたびに、僕は呻いて身を捩らせなくてはいけない。
「次は口でしてあげる」
「ひっ……」
 僕は息を呑んで、楽しそうに笑うクレナの横顔を見た。最初のころより、いくぶん紅潮
した頬は、濃厚な牡臭を嗅いだせいだろうか。
 クレナは髪を掻き上げて邪魔にならないように、右肩に回した。薄衣のような感触が、
腿の上をくすぐっていく。
「くふっ……!」
 クレナの手が勃起を起こした。
「舐めるけど……」
 口を開けると、舌を突き出して、ペニスの先端に近づけていく。これから与えられるだ
ろう快感に、僕は恐怖さえ覚えた。
「あ……あっ……あっ……くううううっ!」
 鈴口に、窄められた舌が突き刺さった。絶頂の余韻がくすぶる肉棒が、小刻みに震えな
がらカウパーを勢いよく垂れ流す。
「きはああぁぁぁーっ!」
 すぐに離れた舌が、ぬらぁっと肉茎を撫で上げてきた。媚薬のような唾液が表皮にしみ
込み、粘膜でペニスを擦られる悦楽を増大させる。クレナは慣らし運転をするように、短
く舐める行為を何度も繰り返した。完全に手加減されているというのに、それでも僕は否
応なく高ぶっていく。ほんの十秒程度の舌奉仕で、あっさりと限界が迫ってきていた。
「銜えるよ……?」
「ううぁっ、く……」
 僕はクレナが口を開けたのを見て、歯を食いしばった。しかし。
「あっ、あっ、あああああああぁー!」
「あむむっ、むぐ……んぶぶぶーっ!」
 亀頭が生暖かい粘膜に捉えられた途端、一秒も保たずに僕は達してしまった。美しい天
女の口腔に、生臭い男の体液をビュクビュクととめどなく注ぎ込んでしまう。
「ふぅぐぐぅんっ! んぐっ、んっぐぐぐーっ……ジュッ、ジュルルルゥ!」
「ひぃぁああああああっ!」
 その最中に、吸われたからたまらない。腰が抜け、ペニスがなくなったかと思うほどの
快楽。容赦のない吸引に触発され、残されていた精液が尿道を走り抜けていく。
「んぐぐぐっ、んぢゅっ……ふぐっんっ……ちゅぷっぁ!」
 クレナはいったん顔を離し、口中に溜まった精液を飲み干した。
「くうぁ、ああ、あ……はううっ……」
「もう一回」
 天女は横目で微笑むと、もう一度股間に顔を伏せた。
「ひぃぃっ、あっくううううっ! っ!」
「ちゅ、んちゅっ……くちゅ、じゅぷっ、んぐ、は、むむむんっ……」
 三度の射精で敏感になりすぎている亀頭を吸われ、舐められ、半ば以上まで銜え込まれ
た。クレナは唇を窄め、中で舌を動かしながら、顔を上下させる。
「ふぐっ、んぐっ、じゅるるっ、じゅぱっ、ろうかな? いい感じ? んぐっ、んぐっぐ
……」
「くはっ、はぐぐっ、っ、あううっ、ううぐっはっ……!」
 裏筋を舐められ、吸われながら吐き出され、勢いよく呑み込まれるの繰り返し。
 僕は大きすぎて感じなくなりそうな快楽の奔流に、性器だけでなく上半身も激しく暴れ
させた。肛門を窄め、キュンキュンと痛いくらいに収縮する前立腺の動きに耐える。
「んぐ、むぐぐ……んっちゅううううっ!」
「はっ、あっあああああああああっ!」
 凄まじい吸引を加えられた僕のペニスは、あっさりと四度目の吐精を迎えた。クレナが
口から離したこともあり、肉棒はこれまでの三回以上に大きく痙攣した。
「ぐううううっ、ああっ! あーっ!」
「くふんっ、んんっ、あふっ」
 大粒の白濁液が、天女の唇の周辺を汚していく。残っていたのが自分でも信じられない
くらいの量だった。
 ほんの二分ほどの間に四回目。
 精液が出なくなっても、ペニスはしばらく射精の動きを繰り返していた。



〜7〜

「はぅ、はぁ、はぁ、ふあ……」
 僕が勝機を取り戻すと、クレナはすでに自分の顔をきれいにしていた。
「うふふっ、すごいね」
 天女は指に残った最後の精液を妖しくすする。
「この世界の淫魔とかの伝説って、きっとあたしたちのことなんじゃない?」
「ど、同感……だね」
 僕のペニスはまだ萎えていない。まるで、天女の手の中にある内は、しぼむことを許さ
れていないかのように……。
「本番、イッてみる?」
「う……」
 僕は怖くなって、口をつぐんだ。手コキとフェラだけで、簡単に四発抜かれてしまって
いるというのに、膣に挿入してしまったら……。入り口に触れただけで果てるとか……じ
ゃあ、奥まで入れられたらどうなるんだ?
「あのさ、ゴム、つけていい……?」
 言いながら、僕は枕元にあるコンドームへ手を伸ばした。
「だめ」
「え……?」
 手を止めて、クレナを見た。女性にゴムをつけるなと言われるのは、子供を作るときく
らいのものだと思っていたんだけど……。
「天女杯はコンドームしないといけないんだけどね。回数わからなくなるから。でもいま
はいいじゃない、しなくても」
「でもさ、したほうが保つと思うし……」
 快感をそれなりに遮断してくれたらありがたい。
「それはそうだと思うけど、つけたら、きっと萎えちゃうよ?」
「あ……そうかも……」
 四回射精しているのに、その直後に小さくなっていないのは、クレナが握っているから。
なら、離したらすぐにしぼんでしまうに違いない。考えてみれば、これまでも肌と肌が直
接触れ合ったときに快感が生じている。
 ということは、邪魔者なし……生で挿入するしかないということだ。
 もう満足してもいいんじゃ……?
 一瞬そんなことが頭をよぎるが、すぐに恐怖感混じりの期待に押し潰される。魔性の成
せる業か、待っているのが快楽地獄でも、挿入しなければ収まりがつかない感じだ。もと
もと男はそういうものなのかもしれない。勃起している間は、満足するまで止まらない性
……。
「じゃ、入れちゃおう」
 クレナは男根を握ったまま、僕をまたいだ。
「ゆっくりイク? 一気にイク? どっちでもいいよ。選んで?」
「それ……じゃあ……、ゆっくりで」
 もしも一気に挿入しきってしまい、その快楽に肉体と精神が耐えられなかったりしたら、
逃げようがなくなる。ゆっくりなら、やばそうだったら途中でやめてもらうこともできる。
「……と、この辺かな」
 クレナは体勢を調整し、慎重に狙いを付けた。
「いくよ……んっ」
 天女の秘唇に、ぬちゃぁっ、と肉槍が口づけをした。
「かふぅうっ!」
 入り口の熱い女肉を感じた瞬間に襲いかかってきたあまりの快楽に、僕は悲鳴を上げた。
口をパクパクさせ、シーツを思い切り握り締めた。まだほんの入り口だというのに、意識
がどこかへ飛んでいきそうだ。
「これでイカないんだから、君やっぱり耐えてる方なんじゃない?」
 クレナは僕が望んだ通り、ゆっくりと腰を落とし込んできた。狭い膣口を尖った鈴口が
こじ開けて、ぬかるんだ天女の肉洞へ亀頭が蛮勇をふるって飛び込んでいく。頭がはまり
きり、少し細くなった付け根の部分を入り口が、キュッと締め付けてきた。
「んんぅっ……ふふっ、すごいね、まだイカないんだ……?」
「くふっ、はあっ、くぅうう……」
 しかし、褒められたのもつかの間。
 ビクッ……ビクビクビクビクッ!
 半分ほど埋まったところで、男根が射精のしゃくりをあげてしまった。
「うっ、ぎっ、あああああああぁぁぁーっ!」
 温かい女肉で先端を包まれての射精は、手コキよりもフェラチオよりも凄まじい快楽
僕に注ぎ込んできた。
「ふふ、もう出てないね、精子……空打ちってやつかな?」
 微笑みながら、クレナは絶頂中のペニスをさらに奥へと誘った。
「かはああぁっ! ま、待ってっ、一回っ、抜いてっ!」
「そんなことしても苦しくなるだけよ。せっかくだから、最後までイッちゃおうよ」
 クレナはそう言って、暴れ出しそうになる僕を抑えつけるように、一気に体重をかけて
きた。ずぶぶ、ぬぬぬっ、と天女の肉を掻き分けながら、先端が膣奥へと向けて加速した。
「ああっ、ああっ、あああああーっ!」
 ぶぷぷっ、と一緒に入り込んだ空気が飛び出していく。すると、膣と男性器の一体感が
段違いに増した。
「あふぅ……これで、ぜんぶ」
 天女のオマ×コの中では、この世のものとは思えないまさに天上の悦楽が待っていた。
どろどろに溶けた淫肉がザワザワと複雑に蠢き、締め付け、肉棒を嬲ってくる。しかも限
界すれすれのペニスは上下に震え、自ら快楽を貪っている。
「はっああ、あ……」
 銜えられているのはペニスだけなのに、全身がクレナの胎内に入ってしまったかのよう
に、あらゆる細胞が快感に打ち震えはじめていた。脳が快楽物質を放出し、バチバチと頭
の芯がスパークする。手足の震えが止まらず、口は声にならない悲鳴を叫び続けている。
息を吸うたびに淫気が肺胞から取り込まれて全身へと送り出され、息を止めれば信号が激
しく駆け回る。吐き出せば、出た分がクレナの女壺から一瞬にして補填され、その落差が
僕を痺れさせる。
 僕は必死に身動きしないように体を固めて、新たな刺激の流入を拒む。
「動かす……?」
「いっ、や……まだ……動かさないでっ」
「じゃあ、オマ×コの中だけでいじめてあげるね」
「くっはぁっ! くぎっ! ひぐっ!」
 膣口がギュッと根本を固定し、肉襞が激しくざわつきはじめた。表皮を剥ぎ取られ、神
経が剥き出しになったような陰茎の表面を締め付けながら、ヌチヌチッと這い回る。信じ
られないことに、襞の一枚一枚の感触をはっきりと感じ取れてしまう。それほどに僕のペ
ニスの感覚は鋭敏になり、そのために暴力的な快感を味わうはめになっていた。
「はっ、ぁ……っ……ぐはあああああああっ!」
 ビクビクビクビクビクッ!
 そんな責めに耐えられるはずもなく、僕はクレナの膣内で二度目の射精を迎えた。けれ
どさっきと同じように精液は一滴も排出されず、ただ絶頂の痙攣のみが僕を襲う。精液が
出ないからといって快感は小さくはならなかった。逆に精液を放出しようとしている一連
の男性器が無意味に収縮を続けるために、射精特有のつる感覚がいつまでたってもおさま
らない。
「うううううううっ、はぐうぅーーーっ!」
 最後にドロッと一滴だけの精子を天女の膣奥に吐き出し、なんとか射精細動は停止した。



〜8〜

「くううう……ううう……」
 射精が終わったからといって、その膣から男根が抜けたわけではない。クレナの秘肉は
継続して僕の分身をぐいぐいと締め付けていた。
「ね、一日で最高何回イッたことある?」
「くはぁっ!」
 クレナが体を重ねてきた。ゴム鞠のようなバストが胸の上で潰れ、生きているように形
を変え、触覚と視覚を嬲ってくる。背中からこぼれ落ちてきたサラサラの長髪がシーツを
握り締めている僕の腕へと滑り落ち、他の刺激を僕に求めさせるような、こそばゆく妖し
い快感を生じさせた。しなやかな腕が脇に巻き付いてきて、天女から触ることができる肌
面積ほとんどが僕と接着した。深い快感がじわじわとそこから注入されてくる。
「もう更新しちゃってる?」
「と、とっくに……」
「そうなんだ。……キスしよっか」
 甘い芳香を引きつれて、天女の顔が迫ってくる。その朱唇はむしゃぶりつきたくなるく
らい、おいしそうな弾力に富んでいた。
 意志を持った禁断の果実がわずかに中身を開示しながら、僕の唇にかぶりつこうとする。
僕は妖美な天女の表情を見ていられずに、目を瞑った。
「はむ……んっ……んちゅ……」
 暗闇の中、柔らかな感触が唇が触れ合ったことを伝えてくる。男根が膣内でビクンッと
大きく跳ねた。
「ン……くちゅ……ちゅっ……ちぅ……」
 目の前の空間から淫らな音が散っていく。痛みにも似た強烈な快楽世界を感じている脳
の中に、どっぷりと甘く漬かった快感がしみ込んでくる。
「あむっ、ぷふ……ぅぅあ……」
 震える腕が、僕を犯している天女の背中へと勝手に回っていき……。
「むううーっ!」
 僕は鳶色の髪ごと、天女の肢体を強く抱き寄せていた。圧力が増した分だけ、あるいは
自分からその生肌を求めたがために、凄まじい喜悦が接地面から込み上げてくる。
「んふふ、もっとしてほしいの? ……ちゅく……ちゅうううっ……」
 耳をくすぐる声、引っぱり出された舌が唇の間に挟まれ、吸われる。ぞぞぞっと鳥肌が
立ち、舌から伝わった甘美な痺れが全身に回り、力が抜けかけた。
 ぬりゅぬりゅと淫らな感触で舌粘膜が擦れ合い、混ざり合った唾液が舌の上で妖しい淫
気を放ちはじめる。口中へ流し込まれた甘い唾を飲みくだすと、胃の中でカァーッと熱く
なった。
「ぱぁ……そろそろ動かすね? んんっ……ん」
 クレナは宣言して、もう一度唇を重ねてくる。僕の体をしっかりと押さえ、それからほ
んの数センチだけ腰を遣った。
 にゅるるるるるっ……と天女の膣から肉棒が引き抜かれていく。
「うむむむぅぅぅぅーーー!?」
 あまりに強烈な快楽に、頭の中が真っ白になった。処理落ちしてコマ送りで世界が進み、
そのせいで本来なら明確には感じられないはずの刺激の波一つ一つを感じてしまう。一ミ
リ動くたびにそれぞれが複雑に形を変え、違う動き方で肉棒を愛撫してくる肉襞の全てを。
それは一回の抜き差しにも関わらず、数百、数千回の抽送に匹敵するほどの快感量だった。
 実時間は一秒に満たないのに、体感時間では一時間にも思えるほどの時間がかかって、
ようやく天女の腰は上昇をやめる。そして、
 ずぶぶぶぶぶっ!
 クレナは、今度はその数センチの距離を一気に沈めてくる。それは一時間もの体感時間
をかけて味わった快楽を、わずか0コンマ数秒で送り込まれるということだった。微動し
ている肉棒が、複雑に絡んだ膣襞によるすさまじい歓待を受けながら、奥まではまりこむ。
その間に受けた快楽がペニスの神経回路を加熱させながら突き進み、腰の奥にある快楽中
枢へ衝突した。ただでさえ満杯だったところに流れ込んできた快楽の濁流に、ダムは簡単
に決壊する。
「ひむむぅぅーーーーっ!」
 ビクン! ビクビクビクゥッ!
 ペニスはクレナの中で七度目の痙攣を起こしていた。全身が天女の肌と触れているせい
で、肉棒だけでなく皮膚や筋肉までもが歓喜に震える。さらに快楽を味わおうとする僕の
体はそれだけでは飽きたらず、天女を引き寄せ、腰を突き上げ、極上の肉洞を深くまで貪
り尽くそうとする。しかしそれは自殺行為だった。射精の拍動中に送り込まれたさらなる
快感によって震えが加速し、連続して八回目が襲ってくる。吐き出した快感混じりの悲鳴
はクレナの中に余すことなく吸い込まれ、増幅されて膣から返ってくる。無限に続くよう
な快楽循環に、意識が白一色の世界へと飛翔した。
「あああぁ……ぁぁ……」
 いつしか何も聞こえなくなり、何も感じられなくなっていた。

〜9〜

「……頭いた……あっ、腰が……」
 意識を取り戻して、自分の体をまず確認。ずいぶん疲労が溜まっている。すさまじい夢
だった。
「っていうか、ここどこ?」
 目が覚めたのは、アパートのベッドの上ではなかった。自分の部屋のベッドよりはるか
にふかふかしているし、天井が高い。照明の色も違う。
「ほっ、てやっ!」
 ……なんの掛け声さ。
 僕はごろりと体を動かす。
 美しい鳶色の髪がまず目に入った。
「……クレナ?」
 天女の名を呼ぶと、服を着込んだ彼女はちらりとこっちを見た。
「起きた? ああっ、あぶな……」
 どうやらテレビゲームに夢中になっているご様子だ。
「……夢じゃなかったのか」
「どっちがよかった?」
「え?」
「夢と現実」
「……どっちだろ」
 なんとか意識に精彩を取り戻してきた僕は真剣に迷う。
「九回はしんどかった?」
「……九回って?」
 八回目で気絶したような記憶。
「ほら、抜くときにもう一回イッちゃったみたいだから」
「……へえ」
 どういうリアクションを返せばいいのかわからない。
「シャワー浴びてきたら?」
「そうだね……四時半……あと三十分か」
 ちょっと待てよ……ってことは二時間以上寝てたってことか?
 最初に二人でシャワー浴びた時間を抜けば、実際の行為は十分にも満たない。千紗との
ときは二時間かけてようやく一回、みたいな状態だったのに……十分間に、九回?
 興奮しているときはそんなに感じなかったけど、冷静に考えてみると身震いする話だ。
「うひゃぁっ!」
 ガシャーン、とかいう効果音が響いた。天女がレーシングゲームでクラッシュしたらし
い。回転する車の横を、次々とカラフルな色のレーシングカーが抜き去っていく。
「もうちょっとで勝てたのに……」
 ゲームをする天女。
 ……エッチのときとどっちが信じがたいかな。
 などと思いつつ、僕は快感の余韻がいまだくすぶる体にお湯をかけた。



〜10〜

 ケータイに友人のメールが入っていた。
『オレらのおごりでいいから飲まんか? 六時からいつもんとこで』
「いこいこ」
 横から液晶を覗いたクレナが即時提案する。
「クレナの分までおごってくれるかはわからないけど?」
「あ。あたしが誰か食べちゃうんじゃないかって思ってる?」
「まー、それは確かにいやだけど、止める権利なんてないし。っていうかさ、きっと早耳
なだけなんだよ、あいつら」
 クレナがポンッと手を叩く。
「君、フラれたとか言ってたっけ?」
「かなり」
 ホテルで精算したから、財布の中に残っているのは千円札一枚きりだと見ないでもわか
る。微妙な打算が働いた。飲みに行っても行かないでも、どのみち夕食は食べないといけ
ないのが世の理だ。
「ま、いいか。行くことにしよう」
「そそ。あとは食べて飲んで、寝るだけ。今日はもう弾切れだもんね」
「ははは……」
 乾いた笑いが口から漏れる。
 なかなか射精できなくて嫌がられてフラれて、そんなに嫌がられてはいないにしろ、極
度の早漏状態に微妙なショックを受けている。あまりにも極端な性体験を重ねている感じ
だ。
『やけ食いするよ?』
 出席というか、参加希望のメールを返信する。すぐに返事があった。
『しゃーねー、慰めてやるさ』
「オーケーだって」
 クレナに言う。普通くらいしか食べれないだろうけど、ああ書いておけばクレナの分も
確保できているに違いない。
「それはよかった。まあ、いざとなれば、一発ずつくらい抜いてあげてもいいしね」
「……帰った後のことも考えて欲しいんだけど」
「ジョーダンだってば♪」
「それよりさ、腕が触っただけでイカせちゃったりとかしないわけ?」
 僕は剥き出しの二の腕を憂慮する。僕自身、露出しているクレナの肌がちょっと怖かっ
たり。
「それはあるかもねー。いいんじゃない? そのときはトイレにいってもらえば」
 と、クレナは腕を組むように要求してきた。ちょっとためらった後、僕は腕を絡める。
「あう……」
 九回イッたというのに、すぐさま反応して勃起してきた。二時間の休息では回復には足
りていないらしく、膨らむと、ビリビリと前立腺や本体に鈍痛が走る。それでも、引き締
まりながらも柔らかい腕の感触を感じている間は、おさまる気配すらない。通常ならなか
なか勃たない状態のはずだし、やはり強制的に勃起させられているようだ。

「これくらいは簡単に我慢しないとさ、明日つらくなるよ?」
「うー……」
 僕らは腕を組んだまま適当に寄り道しつつ、馴染みの店へ向かった。



〜11〜

 六時を少しまわって、僕らは居酒屋へたどり着く。
 いつもの席に友人二人を見つける。二人にも彼女がいるのだが、今日は連れてきていな
いようだ。
 佐山と辻は、僕と一緒に店に入ってきたクレナを見て、呆けたような顔をした。
 僕は素知らぬ顔で、彼らの向かいの席に座る。普通、席は偶数あるので、クレナは問題
なく僕の隣に座ることができた。
「ちぇ、なんだよ。フラれたとか聞いたから誘ったのに」
「そーそー。なんで今日の今日でオンナ連れてくるかなぁ」
 案の定、フラれ男の顔を肴に飲もうという魂胆だったらしい。
「どーいうカンケイ? 千紗ちゃんみたくオマエも次か?」
「……どういう関係?」
 僕はクレナに聞いた。
「いわゆるセックスフレンド」
「ぶっ!」
 佐山が口に入れたビールをジョッキの中に吹き戻す。
「……ではなくて、んー、そうねー……」
 佐山と辻は、返答に迷っているクレナに視線を向けた。目の保養ー、みたいなオーラを
込めて。
「期間限定彼女ってとこかな?」
「へー、なるほど……えっと、名前は?」
「クレナ。ファーストネームね、これ」
「ちなみに、僕らより年上だし……」
「一つだけでしょ」
 ぐにっと頬をつままれる。頬よりもむしろ股間が痛くなってしまう。
「そのクレナさんは、良に請われて失恋の悲しみを癒してあげようっていう、オレたちと
同じくとても好い人なわけだな」
「そうだね、失恋パーティーを開いた友情あふれる二人よりはずいぶん優しいんじゃない
かな」
「ちっ、なんだそりゃ」
「まーいいじゃねーの。ダメージなさそうだしさ」
 そういえば、もうあんまりダメージないな……。
 たぶん気絶させられたせいで、そういうもろもろの感情がリセットされてしまったんだ
ろう。明日という目の前のことでアップアップになりそうだから、感じているヒマがない
とも言えるけど。
「クレナさん、お酒いけるクチ?」
「イケるイケる。大好き♪」
 ……なんか、やらしく聞こえるよな。
 声色も口調も表情も明るいのに、やはりどこか妖しい雰囲気があった。天女という性質
が僕ら地男に作用し、そう思わせているのかもしれない。
 それとも、僕に問題が?
「ねーさん、中ジョッキ二本追加でー!」
「お箸どーぞ。どれでも好きなの食べてくんさい」
「ありがと」
「うは……」
 クレナは割り箸を受け取ろうとして、佐山の手に触れた。ふと横顔を見ると、なんだか
楽しそうに笑っている。きっと実験してみたくなったんだろう。
「あ、ごめんね」
 などと言いつつ、佐山の手の甲を撫でるように触れる。
「うくっ……」
 佐山が呻いて、体を痙攣させた。前屈みになって、信じられないと言う顔で、自分の下
腹部を見つめる。
「なんだよ、手に触っただけでそんなに嬉しかったのかよ。まー、クレナさんくらいの美
人さんなら一緒の席を囲めるだけでも光栄ってもんだけどな」
「ははっ、まーそんなとこだ」
 佐山は苦笑いを浮かべながら立ち上がった。
「わり、ちょっとトイレ」
 勃起を鎮めに行くのか、下着に撒き散らした精液を処理しに行くのか。周囲を気にして
いるところから見て、たぶん後者。
 クスクスと僕らは笑いあった。



〜12〜

 午後十時を回り、僕はクレナを伴ってアパートへ帰ってきた。
「へえー、こんなとこに住んでるんだね」
「こんなとこっていうか、親もと離れた大学生が生活するごく一般的な独身アパートだと
思うけど」
 家賃は手頃。部屋は八畳一間。キッチントイレ風呂がついているあたり、まだしも今風
。光ファイバーが設置されているほど現代的ではないけれど。
 郵便物をチェックし、二階へ上がって、鍵を開ける。
「おじゃましまーす」
「どうぞ」
 電気をつけ、靴を脱ぐ。半日でなんだか色々なことがあったためか、長い間帰っていな
かった気がした。
 クレナは部屋の中心で、大きく息をした。
「やっぱり男の部屋って、男の匂いがするよねー」
「そういわれても、自分の匂いってわからないもんだし」
「あたしが知ってる中では、控え目かな。ちゃんと掃除してるみたいだしね」
 クレナは部屋の内装を見ながら言う。掃除というか、微妙に物が少ないだけだ。狭いか
ら詰め込みすぎると足の踏み場がなくなる。実家にいたときにそれでお気に入りのCDを
踏み割ってしまい、懲りた。
「これが前の彼女?」
 クレナがMDコンポのステレオの上にある写真立てを手に取った。
「……そう」
 高校の卒業旅行に行ったときの、千紗とのツーショット写真。
 無論、部屋を出てから別れ、それから戻ってきてないので始末することなどできるはず
もない。クレナに見られて、何か困るわけじゃないんだけどさ。
「っていうか、どうしようか、それ」
 僕の場合、女性との交際回数が少ない。中学三年のときに一人、高校二年から今日まで
が千紗で、その二人だけ。元カノの写真なんかをどうするか、ってな状況に出会ってない
ので、経験的には対応のしようがない。
「捨てた方がいい?」
「……え? なに?」
 クレナは中身の写真をすでに取りだしていた。しかも写真が、クレナの手の中で炎をあ
げ、一瞬にして灰になってしまった。
「はい、これ」
 僕は無惨な燃えかすを両手で受け取り、ゴミ箱へ。
 ……まあいいや。
 千紗の部屋でも写真はゴミ箱へ行っているだろうし、携帯の画像データも消去されてい
ることだろう。ゴミ箱というか、今ごろは埋め立て地に埋まってるっぽいけど。僕だけ残
していても仕方ないし、未練がましくて情けない気もする……まーこの辺の感覚は人それ
ぞれかな。残しておいてもいいし、処分してもいい。
「デジカメとかないの?」
「一応、携帯にカメラついてるけど」
「じゃ、それでいいや。一枚とろ?」
 僕はポケットからケータイ電話を引っぱり出す。
「良は座って……よいしょ」
「って、ちょ……」
 あぐらをかいた僕の後ろから、クレナが抱きついてくる。腕と頬の感触。もちろん勃起
してしまう。
「はい、撮って撮って♪ いえーい」
「……酔ってる?」
「ちょっとだけテンションハイかもねー」
 手を伸ばし、ツーショットを一枚。……あんまり飾る気になれない写真だ。きっと見る
たびに、このとき勃起してたんだなぁーと思うだろうから。
「なんでもいいからシャツ貸してくれる?」
 クレナはいきなりワンピースを肩から落とした。鼻血ものの、九十のバストが露わにな
る。
「シャツだけでいーよ。あたし、いっつも下はパンツだけで寝てるから」
 目によくないので、できるだけ丈の長いTシャツを探して、渡す。スタイルがいいクレ
ナなので、布は太ももの半分くらいを隠してくれた。
 それからはノートパソコンを開いて、クレナと一緒に色々なホームページを見てまわっ
た。ほどなく、ほのかな酔いと疲労で眠たくなってくる。明日は月曜なので、そのまま早
めに就寝することにした。
「君もこっちおいでよ」
 クレナはタオルケットを持ち上げて、ベッドへ誘ってくる。
「あのな……。僕が寝られると思う、それで?」
「襲ったりはしないよ。添い寝してあげる、ってこと」
「……そんなことされたら寝られなくなるんだってば。興奮してさ」
「慣らしよ、慣らし」
「一日二日でどうにかなるもん?」
「やらないよりはいいんじゃない?」
 本当にそうだろうか。
 ……そうかもしれない。
 普通なら、連続でなんてそうはできないけど、天女相手なら別。快感に対する耐性を少
しでもつけておくことは重要かもしれない……死にたくなければ。
 僕がベッドに上がると、クレナはすぐに抱きついてくる。僕もクレナも半袖なので、当
然のごとく生肌が接触した。
「……抱き枕派?」
「そ、安心して眠れそう……おやすみ」



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