プロローグ 〜盗聴〜

『心(こころ)さんっ、ああ、もっと……』
 パソコンのスピーカーから、隣の部屋の声が流れていた。
「本当に律儀なコね。交互に抱いてるなんて」
 シャワーを浴びてきた初瀬紫(はせ ゆかり)は、冷蔵庫からビールを出し
た。一口飲むと、双子の姉である心を見る。心はテーブルで仕事を続けていた。
その様子を見て、紫は呆れる。
「もう。圭が引っ越してきて一ヶ月以上経つんだから、いい加減慣れたら?」
 姉は白い顔を今日も真っ赤に染めていた。一回、二回目ならともかく、毎日
欠かさずに、もう三十回は聞いているのだ。まったく、信じられないくらいウ
ブで羞恥心が大きい。まあ、大学の時も顔見知りの男から告白されて逃げ出し
てしまった姉なのだから、さほど不思議ではない。二十三になって処女でいる
のも当然というべきだろう。
「双子でここまで性格が違うのってある意味奇跡よ」
 紫はふと、ちちちち、という小さな音が鳴り続けていることに気付く。注意
深く耳を澄ますと、音の出所が心のノートパソコンであることがわかった。
「心。バッファ。溢れてる」
 あっ、と心は押しっぱなしのキーボードから指を離した。それからバックス
ペースで変換待ちの『っ』を一文字ずつ消し始める。思考が鈍っている証拠だ。
『心さん……!』
 上擦った声で名前を呼ばれ、ビクッと顔をあげ、潤んだ瞳を壁に向ける。そ
の向こうのベッドに寝ているだろう少年のことを考えて、色々と妄想している
に違いない。極端な恥ずかしがりの割に、想像力は逞しいのだから困ったもの
だ。圭の頭の中で自分が演じている痴態を想像し、狼狽えてあたふたする姿は、
姉として愛らしくもあるのだが……。
「今日はもう切り上げたら」
「う、ん……」
 と返事はするものの、心はまだカタカタとゆったりとしたペースで物語を書
き綴っている。脳のテンションが上がったまま執筆を続けるから、童話なのに
姫様のキスシーンが濃厚すぎる、などという意味不明のリテイクをくらうのだ。
 いっそ官能小説を書いてみれば、と提案したことはある。官能小説がどんな
ものか知らないようなので持っていたものを渡したが、心はカバーのダイジェ
ストを目にしただけで閉じてしまった。あとでこっそり読んでいたのは知って
いるから、可能性はあるかもしれない。
『あ、イク、心さん、出るっ出るっ……あうう!』
 絶頂の呻き声のあと、激しい息づかいが漏れてくる。心は彼の吐息に合わせ
て、モジモジと腿を擦り合わせていた。


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