第一章 〜接近〜


 〜1〜

「あ、圭くん……」
 午前七時。新川圭が部屋を出ると、隣室の初瀬心と鉢合わせになった。ゴー
ルデンウイークも過ぎ、暑さも増してきているとはいえ、朝はまだ少し冷える。
今朝の心はロングスカートに七分丈のセーターを着ていた。双子の妹と違い、
彼女は落ち着いた感じの服を選ぶことが多い。夏でも胸や背中が開いている服
を心が着ているところを見たことがなかった。家事の邪魔にならないよう、今
は長い黒髪は一つにまとめている。よくヘアースタイルを変える妹の紫とは違
って、彼女の髪型は十年くらい変わっていないはずだ。けれど、優しげで清楚
な美貌と色白の肌にその髪型はよく合っていると圭は思っている。むしろ変え
て欲しくないくらいだった。
「心さん、おはようございます」
 圭がそう言うと、心は頬を染めた。圭の顔を見るのを恥ずかしがっているよ
うに、目を合わせてくれない。
「お、おはよう。今日も早いのね」
 心は俯き加減のまま、上擦った声で言う。彼女は奥ゆかしいというか、今ど
き珍しいくらいの恥ずかしがり屋なのだと圭は思っていた。年上なのだが内面
から滲み出る可憐さがあり、童話作家という職業は彼女の雰囲気そのままだっ
た。
「一緒に行きますか?」
「あ、うん」
 可燃ゴミの日なので、圭も心も透明なゴミ袋を持っていた。持ちますと言い
たいところだったが、圭は袋と別に野球バッグを持っているので無理だった。
「紫さんは寝てるんですか?」
 階段を降りながら、圭は後ろの心に訊いた。
「ううん、もう出たよ。今日は東京の仕事なんだって」
「帰り遅くなるんですか?」
「そんなことないみたい。圭くんは?」
「僕はいつも通り帰りますよ」
 クラブ帰りにマクドナルドに寄っていこうという誘いもあるのだが、圭はい
つも断って帰宅していた。
「なら夕飯のリクエストはある?」
「心さんの手料理だったらなんでもいいですよ」
 ゴミを決められた場所へ置いた後も、心は圭の後をついてきた。駐輪場で自
転車の鍵を外し、かごにバックを載せて、手押しでマンションの前まで行く。
「圭くん、いってらっしゃい」
 心はどこか照れくさそうな笑顔で手を振る。
「練習頑張ってね」
「はい! いってきます!」
 気合いが入った圭は心に手を振りかえし、一気に自転車を漕ぎだした。

 親同士が高校時代の同窓なので、圭と初瀬双子姉妹は幼い頃から交流があっ
た。ただ、マンションでのお隣さんになったのは、圭が進学した今年四月から
である。
 受験校を決める際、圭は両親の母校で最寄りのH学園を選ぼうとしたのだが、
父から反対された。
 現在、父の悟はH学園の体育教師で野球部の監督をしているが、三十五歳ま
では一軍で活躍していたプロ野球選手だった。引退後、大学で取得していた教
員免許で母校の教職に就いたのだ。
「新入部員次第だが、残念ながら今は甲○園を狙える実力はないんだ」
 と父の悟は反対の理由を語った。T県立H学園は過去、悟を中心にして夏の
甲○園に出場し、ベスト4まで進んだ実績がある。だが、最近は特待生制度と
いったスポーツに力を入れている私立校に強い選手が集まって、県立や国立校
はそういった学校に勝てていない。甲○園に出場することもまれだ。
「高校野球はエースで四番がいれば勝ち抜いていける可能性がある。だが強い
チームメイトがいることにこしたことはないんだ。父さんのチームメイトだっ
た投手もプロに入ったようにな」
 父の言うとおりだった。主にそれはエラーの個数、失点となって現れるし、
相手ピッチャーから点を取らなくては勝ちはない。
「いくつか有名校から誘いは来ているわけだから、その中から選んだ方がいい
だろう」
「うん……でも県外だし、一人暮らしになるよね」
「そういう高校だったら、寮生活の設備も充実しているだろう?」
「そうだけど……」
 ためらいがちの圭に、悟は溜息一つ。
「まあ、まだ提出期限まで一週間ほどある。お前の問題だ。じっくり考えれば
いい」
 そんなやりとりから数日後の祝日、圭が一人暮らしを決められなかった理由
である初瀬家族が来客した。
 圭が中三であることは知っていたから、当然、話に出る。
「だったら、ここ、K大付属○校にしたら?」
 そう提案したのは紫。
「野球部も強いし、何より、私たちのマンションの隣、来年から空くのよ。そ
こに入ったらいいわ」
「え?」
「食事の世話くらいしてあげるわよ。心が」
「え、私? ええ、まあ、二人分も三人分もかわりませんけど」
「ま、私も勉強くらい見てあげるわ」
 二人は今年三月までK大生だった。中学や高校もずっと同じだという。性格
が違いすぎて、双子より姉妹関係に近いというし、一緒にいても問題なかった
そうだ。
「しかし、二人が住めるようなマンションとなると……」
「それは寮とかアパートに比べたら割高だけど……、おじさまのわがままなん
だから、それくらいの上乗せ、いいでしょ?」
「うむ……まあ、学費が浮くことを考えれば……」
「なら、私も部屋代、少し出すわ。職業柄っていうか性格的にっていうか、服
がたまっちゃってて、実は置き場所に困ってるのよ。季節ものじゃない服を置
かせてくれたら一万円くらい払う価値があるわ」
「……じゃあ、私も出します」
 心も恥ずかしそうに言う。
「私は、本が……」
「もう、底が抜けそうなくらい溜まってるものね。童話作家に本を読むなとは
言えないし……。どうも私たちって物を棄てるのは苦手みたい」
「ふむ」
 考えている顔をしているが、悟はだんだんと反対する要素が無くなってきて
いるようだった。もともとそんなものはないのかもしれないが。
「私は構わないと思うわ」
 それまで黙っていた母の一美も頷く。
「完全な一人暮らしさせるのも不安だし。だいいち、長距離通学なんて、馬鹿
をいうな、ってことになるでしょ?」
 一時間もあれば、集中できる環境で勉強するか練習するかした方がいい。つ
まりそういうことだ。勉強もスポーツも脳内で情報伝達のネットワークを作り、
定着させるということに他ならない。長時間続ければいいということではない
が、ネットワークの使用間隔は短い方がいいのだ。
「交通費のことを考えたら、自転車で通える距離にあるのはいいじゃない」
「お前はどうなんだ、圭」
「僕は……、僕もそれがいいと思う」
 この憧れの双子姉妹と毎日顔を合わせられることが、そう言わせていた。も
しも他の学校で寮生活を始めれば、今のように二週間に一度すらも会えなくな
ってしまうだろう。
「決定ね? ……第一志望、K大付属○等学校、と」
 紫は進路希望をペンでしっかりと書き込んでしまった。父も母も苦笑してい
るが、ここまで話を進んだわけだから止める気はないようだ。
「これで来年の四月からはお隣同士ね?」
「あ、はい」
「こらこら。こんなに美しいお姉さまとお隣さんになれるんだから、もう少し
嬉しそうにしてよね?」
 ぐにっ、と横から紫に頬をつままれる。
「う、うれひいですよ」
 もちろん、圭は数年前から異性として双子の美姉妹を意識している。けれど
その一方で、二人とも七つ年が離れていて、自分とは釣り合いがとれないよう
な大人の女だという諦めもあった。だから、いくら住居が隣同士になっても、
姉弟のような今の関係から発展するとは思えなかった。それでも、翌年に迫っ
た高校生活に華ができたことは、言葉通り、素直に嬉しかった。


 〜2〜

「圭、ちょっと来て」
 いつのものように三人揃っての夕食の後、紫はキッチンにいた圭を手招きす
る。
「あ、はい」
 圭は呼ばれて、イスに座っている紫の傍までやってくる。素直に従うところ
が彼らしかった。
 紫は微笑んで圭を見上げた。相変わらず両親譲りの繊細な顔立ちだが、去年
より男らしくなってきていた。身長も四月の測定で百七十三だというから、十
センチ近く伸びていることになる。まだまだ成長期で、そのために体つきは野
球部員という感じではない。父の悟から、今の野球選手はタッパがあればある
ほどいい、と言われて、伸長を阻害するような筋トレをしていないためだ。
「あの、なんですか?」
 紫が黙っていたため、不安そうな顔をする。
「マッサージしてくれる?」
「え、マッサージですか?」
 圭は紫の体の上で視線をさまよわせた。肩を揉ませたことはあるが、今回は
言い回しが違ったので、どこなのか迷っているようだ。ブラウスの膨らみやス
カートから大きく飛び出た腿のすき間で目の動きが止まるのを、紫は余裕を持
って観察していた。
「そ。今日、立ちっぱなしだったから乳酸たっぷりって感じなの」
 紫はオーバー気味の動作で足を組む。
「じゃあ、足……ですか?」
 ためらうような口調の中にわかりやすい期待感が込められていて、ちょっと
からかいたくなった。
「嫌ならいいわよ」
「そ、そんなことないですよ」
「無理しないでいいわ。圭も練習で疲れてるんでしょ? むしろしてもらいた
い側よね」
「あ、いえ、練習にも慣れましたから、僕は……」
「そう? じゃあ、お願いしてもいいのかな?」
「はい、大丈夫です」
「なら、こっちからお願い」
 紫は右足を差し出した。圭はしゃがんでためらいがちに紫の素足に手を伸ば
す。双子だから基礎は同じだが、後天的な違いは出る。モデルとしてシェイプ
アップに勤めている紫は、心より引き締まった筋肉をしているので、触り心地
はいいに違いない。
「これくらいですか」
「ふふ、もう少し強くしていいわ」
 圭は指示通りにふくらはぎを揉み始めた。紫は背もたれに寄りかかり、キッ
チンを見やる。予想通り、圭を取られた心が恨みがましい目をこちらに向けて
いた。姉はこの手の、肉体が接触するコミュニケーションが苦手なのだ。本当
は自分もしてもらいたいのだが、怖くて言い出せない。せいぜい一緒に洗い物
をしている程度で、断られたら嫌われたと勘違いしてしまうような性格が災い
しているのだ。
(……このコの性格考えたら、断られるわけないんだけど)
 リラックスしたふりをして目を瞑り、下着を覗けるくらいの微妙な角度まで
足を開いた。熱を帯びた欲望の眼差しをちくちく感じて、じわりと肉孔が潤ん
でくる。パンティーに染みが広がっていくところも見えてしまうだろうか。
「その調子……、はあ、気持ちいいわ」
 紫はうっとりとした声でつぶやいた。

 時刻は十一時半。今日もまた、スピーカーから圭の喘ぎ声が流れ始める。
「今日も順番通りみたいね」
 今夜のオカズは紫のようだ。
「行ってみようかな。圭の部屋」
「え……? えっ!?」
 心は立ち上がって大げさに驚く。実際本心から驚いているに違いないのだが。
 紫としては今の思いつきではなく、夕食を食べているときくらいから決めて
いたことだ。高校にも慣れたようだし、手をつけるならそろそろだと思ってい
た。最初からそのつもりで、K大付属○校への進学を提案したのだから。
 紫は壁に掛かったコルクボードのところへ行き、三人が写った写真の隣にぶ
らさがっている鍵をとる。圭から預かっている、圭の部屋の合い鍵だ。
「ちょっと紫!」
「姉さんも来る?」
「え、私、そんな……」
「聞いてたら?」
 紫はパソコンを指差して、玄関を出た。
 圭の部屋はすぐ隣だ。
 紫は上下に並んだ二つの鍵を順に開けた。圭がチェーンロックをかけていな
いことは事前に確認済みだ。夜這いを期待しているのかもしれない。紫は静か
にドアを開け、同じ間取りで違う匂いのする部屋にあがった。
「圭、いる?」
 紫は寝室のドアをノックする。そして、返事の前に開けた。
「うわぁっ!」
 ベッドの上でズボンを引きあげている圭の姿。紫は理解のある表情を意識的
に作った。
「あらら、ごめんね」
「ゆ、紫さん! ど、ど、どうしたんですか、こんな時間に!」
 圭はベッドの上に正座した。可哀想なくらい慌てている。股間のものは縮ん
でしまったに違いない。
「明日の最高気温。28度だって。それでちょっと薄い服出させてもらおうと
思って」
「あ、あ、は、はい、どうぞ」
 とってつけたような理由を、圭は信じたようだ。勢いよくベッドを飛び降り
ると、ドアの傍にいた紫の脇を駆け抜けて隣の部屋のドアを開けた。明かりを
つける。
「いやになるわよね、まだ五月なのに……」
 紫はその部屋に入った。山積みになっている段ボール箱は心のものだ。実は、
心では持ち上げられないくらい重かったりする。
 紫は夏用の衣服がまとめられた洋服ダンスの中から、適当に二着ほど選んだ。
「これでいいわ。ありがとう」
「いえ、そんな、お礼を言われるようなことじゃ……」
 部屋の入り口に立っている圭は、なんとなくばつが悪い顔をしている。思春
期の男子がオナニーを見られて動揺しないことはまれだろうけれど。
「ふふっ、そうね。じゃあ、さっきの、マッサージのお礼をさせてもらおうか
な」
「え?」
「オナニー。まだ射精してないんでしょ?」
 紫は空気を握った手を上下に動かす。
「あ、あの……それは……」
「出すの、私が手伝ってあげる」
「ええーっ!?」
 紫は悲鳴のような声を上げた圭の背中を押して、寝室に入った。
「こっち向いたらだめよ」
 圭の背中にバストを押し当て、抱きついたような格好で耳元に囁く。
「は、い……」
 胸に回した手から破裂しそうなくらい高まった鼓動が伝わってきた。全身は
緊張からかガチガチだ。紫は手を徐々に下腹部に向けて落としていく。
「あっ……!」
 寝間着の上から肉茎を撫でられて、圭はびくんっと全身を震わせた。紫は本
気であることを諭すように、まだ完全でない勃起を手のひらでこね回す。途端
に体の緊張が弛んで、手の中に若い血液が集まってきた。どんどん膨張してい
く。
「圭ったら、意外に立派なもの持ってるじゃない」
 形を確かめながら、紫は微笑む。大きな感触だ。
「はあ、は……そ、そうですか?」
 圭は同級生や先輩たちと自分のサイズについて話したことはないようだ。尊
敬まではいなくても、憧憬の眼差しで見られただろうに。
「私の好みのサイズよ。ちゃんと剥けてるのかしら?」
「それは、だいじょうぶ、です」
「じかに触っていいわね?」
「お、お願い、します……」
 紫はクスクスと笑いながら、寝心地のよさそうな素材のズボンを膝まで引き
降ろした。飛び出てきた肉竿をすくい上げるように白い指を巻き付ける。
「くうっ」
 刺激が強すぎたのか、圭は呻いて上半身を折り曲げた。ペニスを握っている
紫の右手首を押さえる。引き離そうとしているわけではないが、加減のわから
ない他人の意志が怖いのだろう。
「かたいわ、カリも高いし……一番元気がいいときよね」
 予想通り、圭の怒張は十五センチはあった。ほとんど垂直にそそり立ってい
て、とても熱い。
(心にはちょっときつい太さよね)
 先のことを想像して、紫はほくそ笑む。
「動かすわよ。手を離して」
「でも……」
「すぐにイっちゃうのがイヤ? 怖いの?」
 溢れている先走りを指先ですくい取って、ソフトなタッチで裏筋に塗り広げ
た。当の肉棒は正直に、びくびく切なそうに震えている。異性の手で、それも
憧れの年上の女性に触られているだけで、圭がぎりぎりまで興奮しているのは
間違いない。
「最初はゆっくり擦ってあげるわよ。我慢はできるだけしたらいいの」
 言葉通りに、指を添えたくらい感覚で動かす。圭が擦っている時の力の五分
の一くらいだろうけれど、快感は二倍にも三倍にもなっているに違いない。秘
部を弄ぶ他人の手や息遣いは、それほどの興奮を運んでくるものだ。ましてや
初めての体験となれば。慣れてしまえば、その興奮の高みは二度と味わえない。
「どう? 自分でするのとどっちがいい?」
 胸を左手で撫でながら、若干しごく力を強くして訊く。
「ううっ、ゆ、紫……さんにっ、されるほうが、ずっと……気持ちいい、です」
 圭は色欲に染まった、余裕のない声で答えた。まだ少年の年齢とはいえ、男
を悶えさせる快感に紫は背筋にぞくぞくしたものを感じる。じゅっ、と一気に
秘裂から愛汁が染み出してきて、パンティーを濡らす。
「そうだ。ね、圭は、私と心、どっちがスキなの?」
「……え、それは……その……」
「言わないなら、もうやめちゃうわよ」
 紫はからかい口調で言いつつも、早々と動きを止めてしまう。
「あ、や、やめないで……あうっ」
 一回だけ強くしごいて、催促する。
「どっち?」
「ゆ、紫さん……」
「そんな声じゃ聞こえないわ」
(……姉さんにね?)
 と心の中で付け加える。
「紫さん! 紫さんがいいです!」
 肉声でも隣室に届いてしまいそうなくらいの声で圭は叫んだ。
「いいコね。じゃ、いっちゃおっか?」
 紫は左手を亀頭にかぶせた。
 サオを右手で勢いよく扱いて、左手は膨張していく海綿体をこね回す。手加
減も何もない。ただ暴力的な快感を送り込む。
「あっ、やっ、あっ、そんなに、そんなに、し、したら、すぐ……」
「いいのよ、たっぷり手の中に出しなさい」
「ああっ、イクっ、紫さん、紫さんの手にっ、あううう!」
 圭の全身に力が入り、指を弾かれてしまうかと思うほどにペニスが膨らむ。
上下に肉鞘を擦っていた手を根本へ向かって引っ張り込むと、肉の砲身が大き
くしゃくりをあげた。煮えたぎった精が亀頭を包んだ手の表面に炸裂した。火
傷をするくらい熱い粘液が、少ない隙間から溢れて指まで伝ってくる。
 射精のわななきが終わり、ドロドロの男汁でまみれた手で亀頭を擦ってやる
と、圭は苦しそうに腰を震わせた。紫がペニスを解放すると、圭は息も絶え絶
えにベッドへ倒れ込んだ。
 紫はゼリーのように濃い圭の精液を指の間で弄ぶ。漂ってくる濃厚な男の香
りに、頭がくらくらした。膣が疼いていて、男の体温で鎮めたくなる。
(だめよ、もうちょっと我慢しないと……)
 紫は足下に放置していた服を無事な方の手で拾い上げた。
「おやすみ、圭」
「あ……はい、おやすみなさい、紫さん」
 紫は、とろりとした目つきの圭を見て満足そうに寝室から引き上げた。


 〜3〜

 帰ってきた紫と目が合った。
 情事の後だとわかっている妹に、どういう顔をすればいいか、心はわからな
い。
「どうしたの? あ、もしかして期待はずれだったとか?」
 紫は首を傾げて微笑んだ。
「最後までいくと思ってたんだ」
「そ、そんなんじゃ……」
 心はむっつりと頬を膨らませる。
「あ、圭が私の方がスキって言ったから、嫉妬してる?」
「ち、ちが……」
 心は俯いて、紫が出ていく前とまったく内容が変わらないディスプレイに視
線を落とす。
(……あっ)
 心は画面がスクリーンセーバーに切り替わっているのに気づいて、慌ててマ
ウスをいじった。そんな動きをきちんと見ていたのか、背後で押し殺したよう
な笑い声が漏れる。 
「ねえ、心?」
 首に腕が巻き付いてきて、頬がひっついた。
「……なに?」
 心は横目で同じ高さにある妹の顔を見た。同性で、しかも妹なのに、間近に
ある顔にどきりとする。最近は見るたびに、紫が大人の魅力に溢れていること
を痛感する心だった。
(圭くんだって……大人の女のほうがいいに決まってる……エッチなことも、
してあげられるんだから……)
 自分が幼稚な子供でしかないと思って、少し悲しくなった。さっきの紫の言
葉も図星だったのだ。圭の心が、急角度で紫に傾いてしまったように思う。
「いいものあげるわ」
「なに? ……あっ」
 いきなり、嗅いだことのない匂いが鼻をついた。
 異臭とも思える匂いの出所は紫の指先だった。
 そこには白い粘液が張り付いている。
 その指が、その謎の液体を塗りつけるように、心の唇を念入りになぞってい
く。
 微かな苦みが口の中に広がった。
「圭のザーメンよ」
 顔を固定していた腕が離れたので、心は唖然とした顔で妹を見上げた。紫は
指に残っていた白濁を美味しそうに舐め取ると、意味ありげな視線を残して心
に背を向けた。
「シャワー浴びてくるわ」

 紫の背中がバスルームに消えた後、心は、そっと唇に触れた。
 ヌルリと、指先に白い塊がへばりついてきた。そのグロテスクな白濁液に一
瞬たりとて嫌悪感を感じなかった自分を、心は不思議に思う。それどころか、
それがまるで透き通った極上の宝石であるかのように心惹かれるものを感じて
さえいたのだから。
 理由なんて、一つしかなかった。
「これ、これが、圭くんの、せ、精液なんだ……」
 声に出すと、発散の方法を忘れてしまった頭に熱が籠もり始めた。心拍が激
しくなって、頭の表面で一斉に何かが弾ける。目の前が白く染まったように錯
覚してしまうくらいの明るさだった。
 心は指先を鼻に近づけて、栗の花にも似た濃厚な精の香りを胸いっぱいに吸
い込んだ。
「これ、圭くんの匂いなの? ……すごい」
 匂いを覚えた心は、上唇を下唇に丁寧に重ねた。口の中に若い精の残滓を含
んでいく。苦いはずなのに、甘くすら感じられる。舐めた液体に媚薬にも似た
効果があるかのように、心はどんどん興奮していく自分を自覚していた。
(ああ、私、がまんできない……)
 イスの上で控えめに股を開き、左手でスカートの裾をたくし上げた。股座が
湿り気を帯びた白のショーツを思い切り端に寄せる。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 心は生の精液がついた右手の人差し指を、衣服に触れないように慎重に潜り
込ませていった。指の圭のペニスに見立て、秘裂に近づいてくる様を思い描く。
(もうちょっと……圭くんの精子が、私のに、触っちゃう……)
「くふぁっ」
 指が秘所に触れた瞬間、バチッと感電したような痺れが下腹部に広がった。
 いつもと違う感触だった。
 指に付着している粘液のせいだ。冷めているはずなのに、融解したての金属
のように熱かった。愛液と混じり合って、胎内にじわじわと染み込んでくる。
「ふぅっ……ん、ん……」
 ほんの数ミリはみ出した肉貝の間を指一本でいじりながら、心は泣き声のよ
うな甘い吐息を漏らした。したことのないセックスを想像して、甘い気分でい
っぱいになる。
 普段通り指は膣口に入れることはしなかった。ただ表面の肉を撫でていくだ
け。それでも十二分に、これまで感じたことがないほどの悦楽を味わうことが
できた。
(で、でも、足りないの、もっと……)
 心の自慰は次第に激しくなっていく。
 スカートを握り締めていた左手を離すと、さらに深く大きい快感を味わおう
と、服の上からお椀型の胸肉を揉みしだいた。
「圭くんっ、好き……好きなのっ……もっと、いっぱいして……!」
 刺激が強すぎて触れるのが怖かった肉芽にも積極的に指を這わせた。
「ひ、いっ、ひああああ!」
 膣の奥から背骨を突き上げてくるような快感に、腰を突きだして、顎を跳ね
上げた。
 そのとき、前触れなく、腰にかかっていた体重が消える。
「うあ、あああっ!」
 心は椅子から滑り落ちていた。幸い敷いていたクッションと一緒に落下した
ので尾てい骨にダメージはなかったが、まぬけとしかいいようがない。 
 興奮が少し冷めて、内股を伝った淫汁がスカートとクッションに大きな染み
を作っていることに気づく。もともと濡れやすく、量が多い性質なのだ。他人
と比較したことはなかったが、心自身もそう思っている。
 クッションをいそいそと抱え込んだ。紫がいないときに洗うことに決める。
(ひょっとしたら、紫も……こんなに濡れちゃうのかな……?)
 なんとなく、心はそんなことを思いつく。
 だが紫へ思考は次の瞬間、嫉妬に取って代わられた。
(紫はいいなぁ。思ったことができて……)
 その中心にいるのは、やはり圭だ。
(わ、私だって……、圭くんと……)
 そうは思っても、平静に戻れば、実行は到底不可能だということはよくわか
っている。
(でも、ぐずぐずしてたら……)
 絶頂の余韻に膣がひくひくと震えていた。




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